丘々は、胸に手を当て
退けり。
落陽は、慈愛の色の
金のいろ。
原に草、
鄙唄うたい
山に樹々、
老いてつましき心ばせ。
かかる折しも我ありぬ
小児に踏まれし
貝の肉。
かかるおりしも剛直の、
さあれゆかしきあきらめよ
腕拱みながら歩み去る。
「夕照」は初出が1929年7月『白痴群』第2号である。4行4行3行3行の14行詩である。
「丘々は、胸に手を当て
退けり。
落陽は、慈愛の色の
金のいろ。」
と始まるこの詩は自分のことを「少児(小児)に踏まれし/貝の肉。」と歌っている。つまり、繊細で柔らかい物として設定されている。
この詩の最後で
「さあれゆかしきあきらめよ
腕拱みながら歩み去る。」
と歌っている。「あきらめ」を剛直でゆかしい物としてたたえているのである。
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