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いわき病院控訴審答弁書に対する反論
精神障害の治療と人道及び人権
次期公開法廷(平成26年1月23日)を控えて


平成25年12月6日(矢野真木人9回忌)
矢野啓司・矢野千恵


はじめに

本報告書は医療法人社団いわき病院(いわき病院)と同理事長で同病院長の渡邊医師が懲役25年確定者純一氏に対して行った精神科医療の問題点及び、日本の精神医療と関連する法制度の課題を理解していただくために作成しました。

控訴人矢野啓司及び矢野千恵は、裁判の結果として、28才で突然命を絶たれた矢野真木人の人生が日本の精神障害者の解放と社会参加の拡大に貢献するものになれば、それもまた、矢野真木人の有意義な人生だった、と思うことにしたいと希望します。

いわき病院事件裁判の次期法廷は平成26年1月23日(13時)に高松高等裁判所で行われます。前回の法廷で、裁判長から「内容ある審議を行う」旨の宣言がされましたので、傍聴して興味深いところがあると予想します。私たち控訴人は、日本の精神医療の発展を約束する礎となる裁判展開を期待します。可能な限り多くの皆様に傍聴していただければと、希望いたします。



目次 (下線部分をクリックすると各ページへジャンプします)


【目的】この裁判の目的


第1、いわき病院と渡邊医師の過失

  1. 矢野真木人は99%生きていた
  2. いわき病院の医療と矢野真木人の死を結ぶ直接因果関係
  3. 人権を尊重する精神科臨床医療の確立を目指して
  4. 刑事裁判と民事裁判の関係
  5. 控訴人(原告)の証拠提出
  6. 控訴人(原告)は証明できていないといういわき病院の主張
  7. 純一氏が社会参加できた可能性
  8. 精神障害者の社会参加と精神科開放医療
  9. 任意入院患者に対する精神科開放医療

第2、控訴審答弁書に対する反論

  1. いわき病院と渡邊医師が提出した控訴審答弁書の問題点
  2. 控訴審答弁書が触れない重大な問題
  3. いわき病院が具体的に答弁できない項目
  4. 一般病院の一般の医師だから基本的な事項の過失でも責任は問われない?
  5. 一般人の常識感覚を持たない非常識論
  6. 前方視的判断と後出しジャンケンの論理
  7. 事件当時と現在の医療水準の違い
  8. IG鑑定意見書の問題点

第3、いわき病院の意図と狙い

  1. 裁判官の認識を混乱させる戦略
  2. 高裁結審を見据えて
  3. 精神医学の普遍性といわき病院の姑息な薬理学的主張
  4. 刑事事件の判決と本件民事訴訟
  5. いわき病院の誘導と歪曲
  6. 精神科特例と入院精神療法(II)

第4、いわき病院と渡邊医師の過失の本質

  1. 過失の本質
  2. 「重要な基本的注意」=「重大な副作用又は事故の防止」(結果回避可能性)
  3. いわき病院と渡邊医師の過失のキーポイント
  4. パキシル突然中止は添付文書違反
  5. いわき病院看護の問題点
  6. 十中八九の殺人危険率という詭弁

第5、いわき病院反論書の問題

  1. いわき病院代理人の問題
  2. いわき病院の精神科医療の問題
  3. 刑事事件の時点で判明していたことが全てではない
  4. いわき病院代理人の原告に対する誹謗中傷
  5. IG意見書(I)の偏重が見られる

第6、いわき病院反論書の項目別問題点

    〔Ⅰ,控訴人ら全員の控訴理由に共通する反論〕
    〔1, はじめに〕
    〔2, 本件における基本的争点〕
    〔3, 本件殺人事件の発生原因・経過〕
    〔4, 平成17年11月23日の処方変更について〕
    〔5, 小括(P.18)〕
    〔II, 控訴人矢野啓司及び矢野千恵の控訴理由書に対する反論〕
    〔III,控訴人NS及びNYの控訴理由書に対する反論〕
    〔IV,結論〕

第7、いわき病院と渡邊医師の過失責任

  1. いわき病院と渡邊医師の精神科開放医療の法的責任
  2. いわき病院代理人のかく乱作戦
  3. 矢野真木人殺人事件を発生させた事件の基本構造
  4. 精神科医療と人道及び人権

【結び】日本の精神医療の発展を願う裁判



【目的】この裁判の目的

控訴人矢野啓司及び矢野千恵は、以下の通り平成25年10月1日付けいわき病院代理人KM弁護士から提出された、いわき病院及び渡邊医師の控訴審答弁書に反論する。いわき病院代理人の論理は事実と一般的で普遍的な精神医学論理に基づかない謬論である。いわき病院及び渡邊医師がいわき病院代理人の提出した論理で純一氏に精神科臨床医療を行っていたならば、普通の医師が普通の医療を行っていたら当然可能な予見可能性を持つはずの殺人事故の予見可能性も結果回避可能性も無い。渡邊医師は精神保健指定医であり、法律家であるいわき病院代理人が法廷に提出した精神医学的意見は、当然のことながら、渡邊医師本人の意見及び見解である。いわき病院控訴審答弁書は、渡邊医師の医師の精神医学的資質が極めて低いことを証明する。純一氏による矢野真木人殺人事件は精神医学的な技量に欠ける渡邊医師の錯誤と怠慢と不作為の結果である。この様な医師及び病院に過失責任を問わないことでは、日本の精神医療の改善と発展を期待することはできない。本件裁判の目的は、日本で精神科開放医療が定着して可能な限り多数の精神障害者の解放が実現することである。


 
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