いわき病院事件:地裁敗訴で控訴しました
私たちが野津夫妻と共に高松地方裁判所に提訴していた民事裁判(いわき病院事件裁判)は平成25年3月27日に判決があり、いわき病院の精神科開放医療の過失責任を問う問題では原告が全面敗訴でした。しかし判決は野津純一氏が矢野夫妻に対して合計で1億2000万円余を賠償するように言い渡しましたが、私たちは野津純一氏及び野津家に対してこれを請求する意思を持ちません。私たち矢野は野津純一氏を被告から外して高松高等裁判所に控訴し、野津夫妻も控訴しましたので、引き続き、いわき病院を被告として私たち夫婦と野津夫妻の協力関係を維持することになりました。
■ 概要
矢野は日本で精神科開放医療が定着して精神障害者の社会参加が促進されることを願って、本件裁判を精神障害者野津純一氏の両親野津夫妻と協力関係を持って控訴した。
野津純一氏は被告医療法人社団以和貴会(いわき病院)に任意入院して主治医渡邊朋之医師の下で、統合失調症で開放治療を受けて外出許可に基づく自由外出を行っている際に、見ず知らずの矢野真木人を通り魔殺人し、刑事裁判では心神耗弱が認定されて減刑された上で、懲役25年が確定し、現在医療刑務所で服役するとともに、統合失調症の治療を受けている。
いわき病院と渡邊朋之医師は「野津純一氏が任意入院して開放治療を受ける患者であり、精神科病院は行動制限を一切行うことができない。矢野の主張は、措置入院の要求であり、社会参加が可能な精神障害者を不必要に拘束することを主張する不適切な主張である」と反論した。更に、任意入院患者の暴行他害履歴を聴取することは医師と患者の人間関係の信頼性を損なうため行えないとの見解で、放火暴行履歴がある野津純一氏の過去歴の概要を知っていながら、患者と家族が情報提供しても、主治医が行うべき野津純一氏の行動の詳細と動機について確認調査を行わず、病状予測にも使わなかった。
矢野の主張は「任意入院のままでも、患者の病状が悪化して精神の状態が不安定であるときには一時的な外出制限や付き添い付き外出等の対応が可能であり、それを検討することなく患者の行動に関する危険性(リスク)の評価をして患者を保護(リスクマネジメント)することをせずに自由放任で外出させたことは、精神障害の病的症状がある患者を入院治療させている精神科病院として無責任」というものである。
いわき病院と渡邊朋之医師による任意入院で開放治療を受ける患者野津純一氏の治療は無責任かつ不作為であった。渡邊朋之医師は平成17年2月14日から主治医を務めたが、平成17年11月23日の処方変更では患者野津純一氏とその家族にインフォームドコンセントの説明と同意を得たものではなく、看護師にも周知していない。また精神科医師の常識から外れた、抗精神病薬(プロピタン)の中断と抗うつ薬(パキシル)の突然中断を同時に行ったが、その後の治療中断中に行うべき慎重に病状変化を診察する経過観察は11月30日の夜一回だけであった。またプラセボテストを12月1日に開始したが、12月2日の看護師の一回限りの「プラセボ効果あり」の記述を盾にして、主治医自ら診察して効果判定を行った事実の記録が存在しない。患者野津純一氏は、開放医療の名目の元に、「ほったらかし」の状態であった。そのことは本人が事件の3〜4日前から行い、事件直前に目撃者があり、7日の身柄拘束後に複数の瘢痕が確認された根性焼きを発見できなかった医療と看護の怠慢を証明する。
高松地方裁判所の判決は渡邊朋之医師による最後の診察日の記録(11月30日)を12月3日と取り違えたものである。また「パキシル中断危険情報」を「全ての抗うつ薬継続投与中の危険情報」と取り違え、更に、野津純一氏がプラセボを疑った12月4日に生理食塩水筋注を渡邊医師本人が行ったとして事実誤認した。判決は、予断と架空に基づき、更に、原告の主張を歪曲して、無理に被告の過失責任を否定した。判決は精神科医療の不作為を容認し、道理を逸脱し、精神医療の荒廃を助長して公序良俗に反するものであるとともに、適切な精神科医療の発展を希求する社会の願いに反している。
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