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初監督作で国際批評家連盟賞!『FORMA』

まずは訂正です。今回は、ともに8月16日公開の『エッセンシャル・キリング』と『FORMA』の2本をご紹介と前回で予告しましたが、『FORMA』のみとなります。

『エッセンシャル・キリング』は第57回に書いていました。失礼いたしました。
  ということは日本公開済みです。2011年7月30日公開でした。なかなか日本公開されない作品と前回で書いたのも間違いでした。重ねてお詫びします。
  今度の公開は、もっと広い地域での上映のようです。お見逃しの方は是非。

予告する前に確認しなかった反省と、何を書いたか覚えていない記憶力への不安とが心中ないまぜですが、気を取り直して『FORMA』いきます。
  さて、『FORMA』は凄いです。何が凄いって、国際批評家連盟賞受賞です!
  さすがの私も、国際批評家連盟賞受賞の邦画2本をご紹介したことは忘れていません。第16回『愛のむきだし』の4時間突っ走る熱、第20回『パレード』の見終わった後に残る薄気味悪さは、そうそうあるものではありません。
  まさに批評家をうならせるに足る何かがある作品に与えられる賞を、今年のベルリン国際映画祭フォーラム部門でさらった『FORMA』には、もう1つ凄いことがあります。なんと、これが長編監督デビューの新人監督です!その快挙を成し遂げたのが日本の坂本あゆみ監督だったこと、そして受賞翌日お話をうかがえたのが、私には今回のベルリンでのハイライトでした。

本質という意味があるFORMAをタイトルとしたこの映画は、見る者を暴きます。深く知ろうともせず表面的なことで判断してしまう自分、さらには人の不幸を面白がってしまう自分を、突きつけられた気がします。ホラーでもオカルトでもないですが、ある意味、それ以上にぞっとさせる映画かもしれません。

小さい頃から悲しいことに敏感だったという坂本監督は、ガンジーやマザー・テレサの生き方に憧れたといいます。人間の持っている悲しい性質を、本気で悲しみ、また、そういう人間である自分をも罪深いものと感じている監督が撮った映画とわかると、とても腑に落ちます。
  聖少女みたいですが、学生時代は部活に明け暮れた体育会系だったともいいます。新体操選手として国体出場経験もあるというから半端じゃありません。そこでまた納得したのが『FORMA』の粘り腰。一面からしか見えていなかったものを全てひっくり返して見せる後半、また、そのための伏線をしっかりと張り巡らしてある緻密さ、丹念さは、作り手の粘りを感じさせます。
  その人にとって、それを作ることが必至であった作品、かつ、それを納得の行く形に仕上げるための根気と体力もありときたら、それは強いです。


『FORMA』8月16日公開 ■ ■ ■

9年ぶりに再会した元高校同級生の綾子(梅野)と由香里(松岡)。再会を懐かしむだけではないような2人の関係は、徐々にこじれはじめ…

 監督 坂本あゆみ
 出演 梅野渚、松岡恵望子、光石研、ノゾエ征爾 ほか

2014.8.16 掲載

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