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2016年度日本映画の彗星

2016年度に大躍進を感じさせた日本の俳優はこの二人、池松壮亮と菅田将暉だ。二人の主演作とそれぞれの出演作が立て続けにロンドンにきて、しっかりと刻まれた。

二人の主演作『セトウツミ』は、世界のインディペンデント映画を集めて9月に開催されるレインダンス映画祭に選出されていた。大森立嗣監督(第29回でご紹介)が此元和津也による同名漫画を原作とした映画だ。

川辺で放課後の時間をつぶす高校生、瀬戸(菅田)と内海(池松)が主人公で、かなりの部分が二人の会話劇として進む。自然にボケ、ツッコミになる大阪的会話で笑わせつつ、ハッピーなばかりでもない恋や家庭の事情も透かして見せる。

この一作だけでも二人を印象づけるに十分だが、同じレインダンス映画祭には菅田が主人公(門脇麦)の恋人として登場する『二重生活』も選出されていた。

脚本家、テレビプロデューサーである岸善幸が小池真理子の同名小説を原作に初監督した映画で、“理由なき尾行”を始める主人公が無傷でいられなくなるのがスリリングでセクシーだ。

続く10月のロンドン映画祭には、池松が主人公(阿部寛)の同僚役として登場する是枝裕和監督『海よりもまだ深く』がきていた。

是枝監督はこの映画祭の常連で、新作が出るごとに選出されているのではというほど。そして、世界中の話題作がズラリ一堂に会するショーケース的なこの映画祭にあってさえ、心に留まる一作となるのが常だ。元妻に未練たらたらのギャンブル狂である作家兼探偵を主人公にしたこの映画も、温かい気持ちと淋しさの両方を感じさせる稀有な一作だった。

こうした映画で菅田、池松が刻まれたのは、二人について無知だったせいもある。それまで全く知らなかったところに、いきなりの主演、続けて脇役もきっちりこなすところを見たわけだから、まさに彗星のごとく現れたという感じだ。例えばシャーロック以前のカンバーバッチも観ているとか、イギリス俳優でドヤ顔ができるのとはわけが違う。

だが、実は池松の映画デビュー作を観ていた。渡辺謙、真田広之、小雪なども出演したトム・クルーズ主演のハリウッド映画『ラストサムライ』での小雪の息子役だった。子役として力量があっても、大人の役者になった時に魅力がなければあっさり消えていくものだが、消えずにいたのが池松だった。

年が明けた2月のベルリン国際映画祭では、池松が主演する『夜空は最高密度の青色だ』のお披露目があった。石井裕也監督(第26回でご紹介)、相手役の石橋静河と登壇した池松は、不安を埋めるかのように空回り気味にしゃべり続ける日雇労働者の主人公という役柄の難しさを語っていた。可愛らしい顔立ちのイケメン俳優なのに癖のある役が続いている池松は、伸びしろが大きそうだ。

池松、菅田をチェックしつつ、2017年度、日本からの新彗星にも期待したい。


『セトウツミ』公式サイトhttp://www.setoutsumi.com/
『二重生活』公式サイトhttp://nijuuseikatsu.jp/
『海よりもまだ深く』公式サイトhttp://gaga.ne.jp/umiyorimo/

※上記3本はDVD発売中

『夜空は最高密度の青色だ』公式サイトhttp://www.yozora-movie.com/
※5月13日から東京、27日から全国劇場公開


2017.5.9 掲載

著者プロフィール
山口 ゆかり(やまぐち ゆかり) : ロンドン在住ライター、コラムニスト。映画はニュース記事やインタビュー記事、関連コラムなどを書いています。
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