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祝!国際批評家連盟賞『パレード』

先週、第60回ベルリン国際映画祭で見て、これはいけそうという記事を書いたところに、国際批評家連盟賞受賞!ねっ、言ったでしょ、と得意になってのご紹介。でも、本作は日本でのお披露目の方が先。もう、とっくに目をつけていた方もいらっしゃるかも知れませんが…

隣は何をする人ぞ、はあたりまえ、見知った間柄でさえ、受け入れられたキャラクターとしてのみつきあい、そこからお互いに踏み込むことはしない。そういう東京人の一面を、ゾーッとするほど気味悪くあぶりだすことに成功しているのが本作。

冒頭、ちょっと威張ってしまったが、国際批評家連盟賞受賞をあてたわけではなく、ベルリン国際映画祭のパノラマ部門に選出されていたので、その部門の中から選ばれるパノラマ観客賞を狙えるのではと思っていたところ、獲得したのは国際批評家連盟賞。そうか、それもあったな、観客賞より、そっちの方が納得できる。
  パノラマ部門は、既に一般公開中だったり、公開を控えていたりするような大作、話題作がそろう部門で、有名監督、スターによる映画も多い。去年は、チャレンジのある映画を集めたフォーラム部門の日本映画『愛のむきだし』(第16回でご紹介)が獲得した国際批評家連盟賞を、今年はパノラマ部門の日本映画が獲得したわけだ。
  姉御肌とか、気のいい奴とか、それぞれに個性ある若者に見えていたものが、最後には全く違って見える本作、そこに持っていくまでの説得力を持たせているのが、音楽、細かい逸話の入れ方、若手実力派と言われている役者さんたち、などなど、お見事。批評家をうならせるポイントには不自由しない出来。

映画祭に参加の行定勲監督は、九州から東京に出て感じたという、この独特の人間関係を「東京で、足並みそろえて、にこやかに、というパレードの列から外れた人は、前から後ろに並び直さなくてはいけない」と原作のタイトルでもあるパレードの解釈を話し、「でも、窮屈なのは東京に住んでる人の中だけのことで、外から来る人には東京はいいとこですよ。是非、いらしてください」と、海外での東京の評判を落とさないよう気を使っていたのが、鑑賞後、考え込まされる本作だけに、ちょっと笑えてホッとした。

ちなみにパノラマ観客賞は『ウェイスト・ランド』というイギリス・ブラジル共同制作の作品が受賞。こちらはストレートな感動ドキュメンタリー。観客に選ばれた理由が、見るとよくわかって、またも納得。それぞれの賞にふさわしい作品が、ちゃんと選ばれるものですね。

『パレード』2月20日公開 ■ ■ ■

さして広くもないマンションで、それなりに上手く共同生活を送っている4人の若者達。そこに転がり込んできた得体の知れないところのある男娼。おりしも近所では連続通り魔事件が起こっている。
  この若者達と事件は関係があるのかという謎解きでも引きつけられるが、明かされる真犯人より、もっとショッキングな結末が待っている。

 監督 行定勲
 出演 藤原竜也、香里名、貫地谷しほり、小出恵介、林遣都 ほか

2010.3.2 掲載

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