明治座150年記念公演として、15世紀イタリアの伝説的英雄チェーザレ・ボルジアのミュージカル化が実現した。主役チェーザレ・ボルジアは中川晃教。ミュージカル「ジャージー・ボーイズ」で特異な声域を発揮するフランキー・ヴァリを演じて、2016年第24回読売演劇大賞最優秀男優賞、第42回菊田一夫演劇賞を受賞するなどの特異な存在であったが、今回のイタリア聖職者としての大胆且つ繊細な演技で日本のミュージカル界のリーダーであることを証明したようだ。
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チェーザレ・ボルジア(中川晃教) |
原作は惣領冬実の累計140万部突破の大ヒット漫画。萩田浩一(脚本)、島健(音楽)、小山ゆうな(演出)の大物クリエター達が参加、コロナ禍で約3年の中断を経ての上演キャストは、日本を代表する男性陣。別所哲也、岡幸二郎等、経験豊かなヴェテランと中堅俳優に、2.5次元ミュージカルでも活躍している若手がWキャスト(スクアドラ ヴェルデ、スクアドラ ロッサの2チーム)で加わり、明治座が1873年の創業以来初めてのオーケストラ・ピットを稼働させて生演奏を提供するなど、壮大なミュージカルの公開と注目を集めていた。
ストーリー
15世紀群雄割拠時代のイタリア。聖職者として結婚を許されないボルジア家の当主枢機卿ロドリーゴ・ボルジア(別所哲也)の庶子として生まれたチェーザレは、16歳にして司教の地位につき、父ロドリーゴに家門の勢力拡大のためピサの大学に送り込まれる。味方はユダヤの血を引く没落貴族の孤児ミゲル・ダ・コレッラ(橘ケンチ)のみ。
大学では当時のヨーロッパの国際情勢や政権争いの縮図そのままに、スペイン団、フィオレンティーナ団、フランス団に分かれての諍いを繰り広げている。
さて、ヴァチカンではキリスト教最高位の教皇の崩御が迫り、次期教皇選を睨んだ王侯貴族たちの派閥争いが激化してくる。チェーザレはまず父を教皇の座に就け、やがて自分の理想を実現すべく宿敵ジュリアーノ・デッラ・ローヴェレ(岡幸二郎)との戦いに英知を尽くして挑んで行く。舞台で交差する華麗な衣装の人々。戦い終えてフィナーレで大階段の頂上に佇む黒いタイツ姿のチェーザレの姿に、このミュージカルのテーマと中川晃教の新しい魅力が感じられる。
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古代ローマの貴族階級を制する チェーザレ・ボルジア(中川晃教)後列中央、 ロドリーゴ・ボルジア(別所哲也)後列右 |
蛇足だが、登場人物とその身分が複雑で判別し難い。漫画なら前のページを見ればよいのだが、リアルタイムで進行する舞台で衣装や台詞だけでは甲乙つけ難い。セットの方は明治座の間口の広い舞台に大階段を設置し、盆の展開によって舞台が切り替わるシンプルで見事な構成なので制作陣に更に一工夫望みたい。(1月14日観劇)
2023.2.7 掲載
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