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シアター通よりシアター好き

渡辺晴子
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マシュー・ボーンのシンデレラ

オール男性ダンサーの「白鳥の湖」で強烈な日本デビューを果たしたバレエ界の奇才、マシュー・ボーンが、今度は第二次世界大戦下のロンドンに舞台を移した「シンデレラ」で日本の観衆を再び圧倒した。

王子役は英国空軍パイロットのハリー、仙女役は女性ではなく男性のエンジェルに取って替わられ、王宮の舞踏会はロンドン・ウエストエンドにあるダンスホール「カフェ・ド・パリ」となる。

マシュー・ボーンのシンデレラ
シンデレラ(アシュリー・ショー)とエンジェル(リアム・ムーア)

セルゲイ・プロコフィエフの不協和音を挿入した名曲を生かしたマシュー・ボーンの振付・演出は、ナチの爆撃下で苛立ち、退廃的にもなったロンドン人の心理と行動を巧みに描く。

冒頭では母親と姉妹たち、兄弟たちに女中代わりに使われていた控えめなシンデレラ(アシュリー・ショー)は、空軍パイロットのハリー(アンドリュー・モナガン)に恋するや人生に積極的になり、エンジェルに助けられカボチャの馬車ならぬド派手なサイドカーで「カフェ・ド・パリ」へ乗り込む。ダンスに刹那の楽しみを求めあう人々。そこへドイツ爆撃機の大空襲。逃げ惑う人々。サーチライトにサイレン、爆音が映画館のようにサラウンド・サウンドで客席の観衆を襲う。

マシュー・ボーンのシンデレラ
ロンドン大空襲

天使が時間を巻き戻し人々が再びミラーボールの輝きの下で踊りだし、シンデレラとハリーも結ばれるが、時計の針が12時を指すとカフェ・ド・パリが屋台崩しで崩壊する。タンカーで運ばれるシンデレラ。コバルトブルーのハイヒールが抜け落ちる。街に彷徨い出て懸命にシンデレラを求めるハリー。戦火のロンドンで二人はいつ幸せを掴めるのか?

お伽噺のシンデレラは継母の娘2人との3姉妹の女所帯だが、マシュー・ボーン版では3人の兄弟と車椅子で生活する実父がいるなど男性ダンサーの出演が多い。軍人同士の交流の中での微妙な目くばせ、カフェではさり気なく男性同士が踊るなどゲイを公言するマシュー・ボーンらしいLGBTへの配慮がみられる。(10月6日 東急シアターオーブ)


2018.10.30 掲載

著者プロフィール
渡辺 晴子(わたなべ はるこ) : シカゴ・サン・タイムズ、アジア新聞財団(東京支局長)を経て、現在HKW代表 メディア・リポート特派員。30年来の(社)日本外国特派員協会会員で、選挙管理委員長、文化企画委員長、副会長、監事などを歴任し、現在は永世会員、特別企画委員長。同協会の講演、文化事業などを企画している。また1972年HKWビデオ・ワークショップ(HKW)創立。国際婦人年であった1975年、市川房枝さん、高田ユリさんなど10人の女性先駆者のビデオ・インタビュー“Women Pioneers”を三カ国語(日・英・中)で制作、世界初のビデオによる女性史として1980年「国連・ユネスコ主催 女性とメディア会議」で発表。1980年―1992年ユネスコ「女性とメディア」開発コンサルタントとして、アジア・アフリカの女性放送者にビデオ・テレビ制作等を指導。
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