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シアター通よりシアター好き

渡辺晴子
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劇団四季「パリのアメリカ人」

2019年、劇団四季の最新作は、かつて2015年トニー賞4部門に輝いた「パリのアメリカ人」。「ス・ワンダフル」「アイ・ガット・リズム」をはじめガーシュウィン兄弟の名曲をちりばめた同名のミュージカル映画「An American in Paris」(日本版タイトル「巴里のアメリカ人」ジーン・ケリー、レスリー・キャロン主演/1951年)に想を得た作品は、さらに小粋にスタイリッシュなパリの恋となった。筆者が観劇した回は、劇団四季のトップダンサー石橋杏実と酒井大の二人組が主演を務めた。

劇団四季「パリのアメリカ人」
ジェリー・マリガン(酒井 大)とリズ・ダッサン(石橋杏実)
[撮影:下坂敦俊]

舞台は第二次世界大戦直後のパリ。アメリカの退役軍人で画家をめざすジェリー・マリガン(酒井大)と、同じくアメリカの退役軍人で作曲家を目指すアダム・ホックバーグ(斎藤洋一郎)、ショーマンを目指すフランス人のアンリ・ボーレル(小林唯)、三人の男性が恋に落ちたのは同じ一人の女性、バレリーナの卵リズ・ダッサン(石橋杏実)だった。

いかにも劇団四季らしい青春もののミュージカル。ガーシュウィンの音楽が素晴らしく、馴染みがあるなかで改めて興奮させる。映画とストーリーが違うところはお金持ちの坊ちゃんと思われていたアンリが、両親と一緒にナチスに対抗して、レジスタンスを命懸けで助けていたことである。ユダヤ系のリズ・ダッサンの両親を助け、母親と同じくバレリーナの道を目指す彼女のパリ生活を庇護していた。

劇団四季「パリのアメリカ人」
左より、ジェリー・マリガン(酒井 大)、アダム・ホックバーグ(斎藤洋一郎)、アンリ・ボーレル(小林 唯)
[撮影:下坂敦俊]

第1幕のダンサーや俳優たちが踊りながら歩きながら、背景のセットを次々と動かして、戦後のパリの街並みの再構築を見せてくれるところが目新しい。ピアニストのアダムが「パリのアメリカ人」であることは2度目に見た時に分かった。彼が名前を聞かれて「ガーシュイン」と答えるのも笑える。今回、主役の酒井大以外はほとんど劇団四季内のオーディションで抜擢されたと聞いたが、亡き浅利慶太氏の育てた人材の厚みを感じた。神奈川芸術劇場の後は何処でロングランを続けるのだろうか?(2019年1月20日~3月8日:東急シアターオーブ/2019年3月19日~8月11日:神奈川芸術劇場ホール)


2019.3.13 掲載

著者プロフィール
渡辺 晴子(わたなべ はるこ) : シカゴ・サン・タイムズ、アジア新聞財団(東京支局長)を経て、現在HKW代表 メディア・リポート特派員。30年来の(社)日本外国特派員協会会員で、選挙管理委員長、文化企画委員長、副会長、監事などを歴任し、現在は永世会員、特別企画委員長。同協会の講演、文化事業などを企画している。また1972年HKWビデオ・ワークショップ(HKW)創立。国際婦人年であった1975年、市川房枝さん、高田ユリさんなど10人の女性先駆者のビデオ・インタビュー“Women Pioneers”を三カ国語(日・英・中)で制作、世界初のビデオによる女性史として1980年「国連・ユネスコ主催 女性とメディア会議」で発表。1980年―1992年ユネスコ「女性とメディア」開発コンサルタントとして、アジア・アフリカの女性放送者にビデオ・テレビ制作等を指導。
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