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ミュージカル「リトルプリンス」

シアター通よりシアター好き

渡辺晴子
著者プロフィールバックナンバー

「星の王子さま」として日本の読者にお馴染みの「リトルプリンス Le Petit Prince」は刊行以来60年、世界70か国で愛読されているフランス人アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリの珠玉の物語である。飛行家で作家のこの著書には著者自身の手による挿絵も添えられており、別のメディアに移行するのは極めて難しいのだが、音楽座ミュージカルオリジナルプロダクション(演出・小林香)はこれを見事に舞台化した。

* * * * *

砂漠の真っただ中に不時着した飛行士(井上芳雄)は、宇宙の小惑星から旅してきた不思議な王子(加藤梨里香/土居裕子)に出会う。王子の惑星はとても小さく、火山3つとバウバウの木、一輪のバラの花(花總まり)が咲いているだけという。王子は毎日火山を掃除し花の面倒を見ているが、ある日プライドが高く我儘にふるまうバラの花と喧嘩して、小惑星を飛び出す。弱みを隠して意地を張る高慢なバラの姿に花總の個性が光る。そして王子は6個の惑星を順々に旅して見聞を広げることになる。

ミュージカル「リトルプリンス」
バラの花(花總まり)と王子(加藤梨里香)

7番目に地球にたどり着いたのだが、誰もいない砂漠だった。そこで出会ったのがヘビ(大野幸人)。王子の体に纏わりついて、故郷の星に帰りたくなったらいつでも「Poison Kissでお届けします」と告げる。大野のスリムな身体が蛇となって灰色無機質の舞台(美術・松井るみ)を繊細に出入りする姿は見事。次に出会ったのはキツネ(井上芳雄二役)。草臥れかけた中年飛行士が立派な尻尾を持つキツネに変貌して大ジャンプするのには、観客は拍手喝采(但し、コロナ禍の沈黙観劇なので気持ちだけで喝采)。王子とキツネは時間をかけて少しずつ間合いを詰めて親友となる。

ミュージカル「リトルプリンス」


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1週間分の飲み水は尽き果て、井戸を求めて王子と共に砂漠を歩む飛行士。奇跡的に古井戸に出会い、思う存分清らかな水を飲み干す。

王子が小さな惑星を出発してからちょうど1年目。王子はヘビの一噛みで身体を離れ、バラの花が待つ故郷の星に帰って行く。飛行士に宇宙一杯の星空をプレゼントしながら。

「一番大切なものは目に見えない。絆を結んだものには永遠に責任を持つ」。コロナ禍で人々の距離が離れる現在、改めてアントワーヌ・ド・サン=テグジュペリのメッセージに共感できる。

  • 2022年1月8日(土)~31日(月)
    東京・シアタークリエ
  • 2022年2月4日(金)~6日(日)
    愛知・日本特殊陶業市民会館ビレッジホール

2022.2.5 掲載

著者プロフィール
渡辺 晴子(わたなべ はるこ) : HKW、シカゴ・サン・タイムズ、アジア新聞財団(東京支局長)を経て、現在HKW代表メディア・リポート特派員。30年来の(公益社団法人)日本外国特派員協会会員で、副会長、理事、監事、選挙管理委員長を歴任し、現在は永世会員。特別企画委員長としての同協会の取材活動、文化事業を主宰している。また上智大学講師、ユネスコ「女性とメディア」開発コンサルタントとして内外のジャーナリストを育成。
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