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ミュージカル「ザ・ビューティフル・ゲーム」

シアター通よりシアター好き

渡辺晴子
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ミュージカル界の大御所A.ロイド・ウエバ―のミュージカルといえば「オペラ座の怪人」、「キャッツ」、「サンセット大通り」など、ウエスト・エンドやブロードウエイはもとより、世界各国で絶え間なく公演されている人気グローバル作品である。

「ザ・ビューティフル・ゲーム」は一見、北アイルランドの首都ベルファストのサッカー・チームの若者たちを描いたローカル社会派ミュージカルのようだが、政治と宗教に不当に翻弄される青春の愛と苦しみを描いて、時代を超え国境を越えた普遍的なグローバル作品となっている。


ストーリー

1969年、イギリス領北アイルランド首都ベルファストでは、IRA(北アイルランドの独立を目指すカトリック組織)の活動が日増しに活発となり、サッカー・チームの中でもプロテスタントとカトリックの対立が目立ってくる。街の人々は試合を「ザ・ビューティフル・ゲーム」と呼び、プロサッカーを目指すエースのジョン(小瀧望)はトーマス(東啓介)、ダニエル(新里宏太)、ジンジャー(皇希)、デル(木暮真一郎)と共に国内優勝を目指してオドネル神父(益岡徹)の厳しい監督のもとで訓練を続けている。

ミュージカル「ザ・ビューティフル・ゲーム」
ジョン(小瀧望)

試合ではジョンを愛するメアリー(木下晴香)と共に、クリスティン(豊原江理佳)、バーナデット(加藤梨里香)達もそれぞれの選手を目当てにスタンドから声援をおくる。試合終了後に、唯一の大人であるオドネル神父は宗教上の対立を抱えた全員に優勝記念の団体写真を焼増して配り、「これが君たちの姿だ」と忠告する。

さて、メアリーとの新婚の初夜、ジョンは緊急の電話を受けてIRAに加わったトーマスを国境まで送る。この逃亡者幇助の動きが英国側に漏れてプロテスト最中に収監されてしまう。密告したのは誰なのか? やがて釈放されたジョンはメアリーのもとに戻るが、政治的に中立だった彼は刑務所の中で教育され「今や戦士だ!」と宣言。お腹の息子に渡すグリーンのユニフォームを嘆くメアリーに托し、ロンドンに旅立つ。

ところが、そのジョンが突如として帰宅してきてハッピー・エンドとなる。作詞脚本を担当したベン・エルトンは何度も台本を改定し、今回の日本語版はその最新版の翻訳上演と言われているが唐突感は否めない。

ミュージカル「ザ・ビューティフル・ゲーム」
ジョン(小瀧望)とメアリー(木下晴香)

この作品で特筆すべき点は甘く切ないスロー・バラードと激しく爆発する「決勝戦」のダンス(振付ケイティ・スペルマン)。グリーンと赤のユニフォーム、両チーム選手の素早い足技でボールの動きが見えるようだ。主役の小瀧望、相方の木下晴香をはじめ主要配役の新鮮な演技に将来を期待したい。(製作:東宝・東京グローブ座/東京公演:日生劇場 2023年1月7日~26日/大阪公演:梅田芸術劇場メインホール 2月4日~13日)


2023.2.1 掲載

著者プロフィール
渡辺 晴子(わたなべ はるこ) : HKW、シカゴ・サン・タイムズ、アジア新聞財団(東京支局長)を経て、現在HKW代表メディア・リポート特派員。30年来の(公益社団法人)日本外国特派員協会会員で、副会長、理事、監事、選挙管理委員長を歴任し、現在は永世会員。特別企画委員長としての同協会の取材活動、文化事業を主宰している。また上智大学講師、ユネスコ「女性とメディア」開発コンサルタントとして内外のジャーナリストを育成。
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