コロナ禍で開幕直前に中止となった「モダン・ミリー」のリベンジ公演が始まった。今回はコロナ対策を徹底して、東京公演、大阪公演打ち上げまで無事に続演してほしいものだ。
ジュリー・アンドリュース主演映画をミュージカル化した「モダン・ミリー」は2002年ブロードウエイで大ヒットし、「ベストミュージカル」を含む6部門でトニー賞を獲得した。今回15年ぶりに日本で再演する舞台の主役は、元宝塚トップ・スターの朝夏まなと。同じく元宝塚スターの一路真輝、実咲凜音に加えて元劇団四季のベテラン保坂知寿といった強力個性派の女性が陣営をがっちり固め、中河内雅貴、廣瀬友祐の爽やかな男性陣が加わっている。
ストーリー
1920年代は第一次世界大戦を終えたアメリカがバブルで沸き返り、新しいファッションに身を包んだ女性「モダン・ガールズ」が誕生する。
1922年、中西部の田舎カンザスで育ったミリー・ディルモント(朝夏まなと)はモダン・ガールを目指しニューヨークに向かうが、街に着くなり財布を盗まれてしまう。
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朝夏まなと(ミリー・ディルモント) |
ミリーは、偶然出会ったジミー・スミス(中河内雅貴)に教えられた女性長期滞在型プリシラ・ホテルにたどり着く。この町での成功を願う若い女性たちが暮らしているところで、オーナーは中国人で元端役の女優、ミセス・ミアーズ(一路真輝)。香港出身の中国人兄弟バン・フー(安倍康律)、チン・ホー(小野健斗)を使って、就職先が決まらず家賃を滞納する女性や、身寄りのない女性に何か企んでいるようだ。
速記の腕を認められ保険会社に就職したミリーは、玉の輿を狙って社長のトレヴァー・グレイドン(廣瀬友祐)に猛烈アプローチを開始。新しくホテルに滞在することになったドロシー・ブラウン(実咲凜音)やジミーに誘われ、大物歌手のマジー・ヴァン・ホスミア(保坂知寿)のパーティーにも参加するなど、ニューヨーク・ライフを楽しんでいるが、突然ドロシーが行方不明となる。
ミセス・ミアーズが若い女性たちを中国に売り飛ばしていることを知ったミリーは、ドロシー救出のためジミー、グ゙レイトンと動き出す。
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このミセス・ミアーズのスケールのデカイ怪演が楽しい。床に届きそうな三つ編みを振り回しながら、広東語(?)で命令し、中国人兄弟をこき使う。無理な仕事も香港にいる二人の母親をアメリカに入国させるため、と押し付ける。端麗だった元宝塚トップスターの意外な変身ぶりが爆笑を生む。
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一路真輝(ミセス・ミアーズ/左)、朝夏まなと(ミリー/右) |
演劇界のポリティカル・コレクトネスでは、ここまで言っていいのかと思えるほどの中国偏見に加担しているミアーズの台詞だが、弟のチン・ホーとドロシーが恋仲になることでバランスを取っているのだろう。
特筆すべきは3段構えの舞台が有効に使われていること。
下段は普通の舞台、上段はホテルの客室など。そして中段はオーケストラ・ボックスで、外側に張り付けた字幕には広東語の日本語訳や、ミセス・ミアーズが演じたがっていた「ロメオとジュリエット」の台詞まで現れる。
朝夏まなとのモダン・ガールのファッションやダンスは秀逸だが、最大の欠点はオーラがありすぎてカンザスから出てきたばかりの若い娘には見えないこと。
とは言え、コロナ禍から復活したミュージカル・コメディー。細かい欠点には(大きな欠点にも)目をつぶってオープニングからフィナーレまで笑いまくろう!(東京:シアタークリエ 2022年9月7日~26日/大阪:新歌舞伎座 10月1日~2日)
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廣瀬友祐(グレイドン/左)、朝夏まなと(中央)、中河内雅貴(ジミー/右) |
2022.9.21 掲載
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