舞台芸術も人間生活に必須のビタミンやミネラルではなかろうか? やっと劇場に俳優と観客が戻ることができた。
「レ・ミゼラブル」には今までもダブル・キャスト、トリプル・キャストが組まれていたが、今回の2か月間の公演にはトリプル、クアトロ・キャストが多い。ジャン・バルジャンには福井晶一、吉原光夫、佐藤隆紀の3人、ファンテーヌには知念里奈、濱田めぐみ、二宮愛、和音美桜の4人、テナルディエには駒田一、橋本じゅん、斎藤司、六角精児の4人だ。
他にもジャベール、コゼット、マリウス、アンジョルラス、エポニーヌも3人一組。キャストを広げたことは「出番が無ければギャラがない」役者には朗報で、新しい配役で舞台を見たい観客にも楽しみがある。
今回のキャメロン・マッキントッシュ新版の明るさを絞った照明は、「レ・ミゼラブル」のミュージカルというよりオペラを思わす舞台に相応しい。
ただし、アンジョルラスの死にざまには不満が残る。学生たちの戦う砦の回り舞台が反転して、革命の赤旗の上に逆さまになって倒れているアンジョルラスの姿。“Crazy for you”などほかのミュージカルではパロディになっている姿だが、定番として残してほしい。この姿がないとマリウスの歌う「言葉にならない痛みと悲しみ、空の椅子とテーブル、友はもういない」が観客に伝えきれない。(帝国劇場 5月24日~7月26日)
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ジャン・バルジャン(中央奥・吉原光夫)、ファンテーヌ(左・和音美桜)、エポニーヌ(右・生田絵梨花)、 マリウス(中央手前右・竹内將人)、コゼット(中央手前左・加藤梨里香) |
2021.6.14 掲載
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