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ミュージカル「マリー・アントワネット」

ミュージカル「マリーアントワネット」(原作・遠藤周作『王妃マリー・アントワネット』/脚本・歌詞/ミヒャエル・クンツェ、音楽・編曲/シルヴェスター・リーヴァイ)は、2006-07年東京初演以来「帝劇から世界へ」をモットーに、日本発の世界的ミュージカルとしてドイツ、ハンガリー、韓国など各地で公演を重ねるうちに、登場キャストが整理され新曲が加わるなど改編、内容を深化させて今回、2021年東京に戻ってきた。

グランド・ミュージカルの豪華さを超えて、ヒューマン・ドラマとしても共感を呼ぶのは、遠藤の創作した貧しいながらも人間としての公平を目指すマルグリット・アルノー(ソニン)の存在。王妃マリー・アントワネット(花總まり)と奇しくも頭文字はMAで背格好も同じ。このミステリーは終盤になって、スウェーデン伯爵フェルセン(田代万里生)によって明らかにされる。

ミュージカル「マリー・アントワネット」
舞踏会に乱入したマルグリット・アルノ―(ソニン・右)とマリー・アントワネット(花總まり・左)

18世紀末、フランスは財政難に陥り、農村は不作で疲弊し、パリの民衆は貧困に苦しみ、王政への不満が高まってきたが、貴族たちは相変わらず豪奢な生活を送っている。オルレアン公主宰のパレ・ロワイアルの舞踏会に紛れ込んだマルグリットは、王妃マリーや貴族たちに必死に窮状を訴えるが、「パンがなければケーキを食べればよい」と相手にされない。マルグリットは飢えた子供たちや民衆に提供するため、屈辱をこらえて拾ったケーキをズダ袋に収める。

ソニンがパリの闇を見据えて熱唱する“100万のキャンドル”には迫力がある。

ミュージカル「マリー・アントワネット」
マリー・アントワネットと恋人フェルセン伯爵(田代万里生)

オーストリアの女帝マリア・テレジアの末娘で、後にルイ16世となる15歳のルイ・オーギュストと14歳で結婚したマリーは、フランスの宮廷政治の中で成す術もなく、華麗なファッションや舞踏会で身を過ごしていた。信頼できるのはスウェーデンの伯爵フェルセンと二人の子供たちだけ。マリーは、ダイヤモンドをちりばめた首飾りは国家の財政を慮って購入を断ったが、王座をねらうオルレアン公は、マルグリットにマリーに似せた扮装をさせて首飾りを受け取らせ、詐取する。この首飾り事件で王妃マリーは民衆の支持を失ってしまう。

ミュージカル「マリー・アントワネット」
民衆を率いるマルグリット・アルノ―(ソニン)

オルレアン公が資金を提供した新聞は嘘と扇動の情報を流し、蜂起した民衆はヴェルサイユへ押しかける。マリーとマルグリットのデュエット“憎しみの瞳”は二人のパワーが鬼気迫る。ついにマリーと子供たちは幽閉されてしまう。監視兼介助人となったマルグリットは、子どもたちが歌うおじいさまに教わったという歌“明日は幸せ”に懐かしさを覚える。

それは、彼女も名も知らぬ亡くなった父から受け継いだものだった。一緒に歌うマリーとマルグリットに、立場を超えた共感があふれてくる。

そして、フェルセン伯爵は大きな秘密を告げる。

1793年1月、ルイ16世処刑。同年10月、マリー・アントワネット革命広場にて処刑。享年37歳。フィナーレにルイ16世が発明したギロチンの音が高らかに響いた。(東京:2021年1月28日~2月21日 東急シアターオーブ/大阪:2021年3月2日~3月11日 梅田芸術劇場)


2021.2.20 掲載

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