2019年6月7日帝国劇場で始まったウイーン発の東宝ミュージカル「エリザベート」は、8月26日満席で千秋楽を迎えた。2000年の初演から数えると12回目の日本公演となる。
今回の主役Wキャストは、エリザベート(オーストリア皇后)・花總まり、トート(黄泉の帝王)・井上芳雄組と、若手の愛希れいか、古川雄大組。
花總まりは、シシーと呼ばれるお転婆な少女時代からオーストリア皇帝フランツ・ヨーゼフに嫁ぎハプスブルグ帝国の後期を過酷な運命に毅然と向かう女性を余裕でこなす。初代ルドルフ役を演じて15年を経てトートとしてこの作品に戻ってきた井上のトートは威厳と幽玄さが黄泉の帝王に相応しい。
宝塚歌劇団元月組の娘役トップで2018年宝塚版「エリザベート・愛と死の輪舞」で退団した愛希は退団後の初東宝ミュージカル挑戦を成し遂げ、古川は12年~16年のエリザベートの息子ルドルフ役から今回トートに成長した。
ルイジ・ルキーニWキャストの山崎育三郎と成河は、伸び伸びと個性的な役を楽しんでいたようだ。
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[ミュージカル「エリザベート」より] 井上芳雄(トート)と成河(ルキーニ) |
エリザベート(脚本/歌詞 ミヒャエル・クンツェ、音楽/編曲シルヴェスター・リーヴァイ)が1992年ウイーンで初演した時は酷評されたというが、既に12か国で1100万人の観衆に熱狂的に受け入れられている。また日本語版の潤色に合わせて版ごとにシルヴェスター・リーヴァイは新しく編曲している。
キャスト総勢約60人の大作は歌舞伎の「忠臣蔵」のように役者として参加すること自体がステイタスであり、古い観客も新しい観客も数年ごとに観劇することを習慣とするミュージカルの古典になったのではなかろうか。
2019.9.1 掲載
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