ダフネ・デュ・モーリア原作のロマンティック・ミステリー「レベッカ」はヒッチコック監督の不滅のスリラー映画となり、更に脚本/歌詞:ミヒャエル・クンツェ、音楽/編曲:シルヴェスター・リーヴァイにより、ユニークなウィーン・ミュージカルとなった。今回、日本上演三度目の新プロダクションは、シアタークリエの10周年記念公演となる。
平凡な付き人から名家の夫人へ
「わたし」(トリプルキャスト:平野綾/大塚千弘/桜井玲香)は、ニューヨークの女性富豪ヴァン・ホッパー夫人(森公美子)の付添人としてモンテカルロに滞在する。そこで、社交界で評判の才色兼備の妻レベッカをヨットの事故で亡くした、英国コーンウォールの大邸宅マンダレイの持ち主マキシム・ド・ウインター(山口祐一郎)と知り合い求婚される。「レディーなんて柄ではない」と夫人に反対されるが、ミセス・ド・ウインターとなりマンダレイに向かう。
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ダンヴァース夫人の策略で レベッカと同じ衣装で舞踏会に出た「わたし」(平野綾) |
そこで待ち受けていたのが家政婦頭のダンヴァース夫人(ダブルキャスト:保坂知寿/涼風真世)。レベッカに幼少時から仕え婚家まで付き添ってきた彼女にとって、マンダレイはレベッカの館であり家具調度品も生前と同じく配置。平凡に生きるアメリカ女性など主人として認めず陰険に重圧をかけてくる。
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ダンヴァース夫人(保坂知寿)は 「わたし」(平野綾)に重圧を執拗にかける |
海難事故で発見されたレベッカの死体、彼女の身分を隠してのロンドンでの診療、ボート小屋での従弟との密会。事件が進むにつれて氷のようなレベッカの悪女ぶりと本当にマキシムが愛したのはレベッカでなく「わたし」と明らかになってくる。
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レベッカの死の真相を語るマキシム(山口祐一郎)と 慰める「わたし」(平野綾) |
20年後「わたし」とマキシムは、ダンヴァース夫人の手で炎に包まれ廃墟と化したマンダレイを静かに回想するのであった。
レベッカを追慕して歌うダンヴァース夫人の「レベッカ」はこの作品の白眉。保坂、涼風ともに鬼気迫る歌唱力を示す。「わたし」でなくダンヴァース夫人がマンダレイの実質上の支配者であることが明らかだ。
森公美子の女富豪はモウケ役。陰気になりがちな英国貴族の舞台をヤンキー・パワーで盛り上げている。山口祐一郎のマキシムと平野綾の「わたし」もいい雰囲気を出している。(2019年1月5日より2月5日までシアタークリエ)
2019.2.3 掲載
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