ノリのいいミュージカル、というか「のせの良い」ミュージカル。
観客は舞台の進行に合わせて手拍子、足拍子、腰を揺らせてペン・ライトを振り回し、シアタークリエを震わす。
主演の朝夏まなと(グロリア・エステファン)を目指してシェイプ・アップか? 観劇とワーク・アウトが同時にできるラティーノ・ミュージカルだ! と冗談言いたくなるほどこれは観客を座席から立たせて運動させる作品だ。
朝夏まなとは、マイアミ育ちの歌好きなキューバ移民の娘から試練を重ねラテン・ポップスで世界を席巻したグロリア・エステファンの半生を、美声と脚線美でキビキビとスピーディーに演じる。事故から悲壮なリハビリを克服して自分の足で(ON MY FEET)立ち上がったフィナーレのアメリカン・ミュージック・アウォ―ドの姿は、やはり宝塚だけでなくミュージカル界でもトップ・スターの貫禄だ。
渡辺大輔(エミリオ・エステファン)は、「ラティーノ」を「マイアミの人々」と呼びスペイン語以外のレコードを製作しない弱腰の会社役員たちに逆らって「若い男はグロリアに恋する。娘たちはグロリアに憧れる」と強気で英語によるラテン音楽を自分たちでプロモートする強引さと、マドリード空港でかつてハバナを逃れて米国に入国した時の惨めさを思い起こす悲しみの温度差の表現が見事。
一路真輝(グロリア・ファハルド)は、歌手・俳優として売り出す手前まで行きながら挫折したことから、娘の将来の安全を口にしながら成功を素直に喜べない母親の複雑な心理を微妙に表現する。娘の事故で改めて娘への愛情を確認する姿が観客を納得させる。
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グロリア・エステファン(朝夏まなと・右)とグロリア・ファハルド(一路真輝・左) |
久野綾希子(コンスエロ)はゆとりの配役。娘に心配りしながらも孫のグロリアの才能を信じ、地元マイアミで評判のラテン・バンドのプロデューサー、エミリオ・エステファンに引き合わせる。愛すべきおばあちゃまとしてフィナーレで踊る姿が可愛い。
音楽(歌詞、編曲)はグロリア&エミリオ・エステファン自身のオリジナルだ。(シアタークリエ 2018年12月8日~30日 その後福岡、愛知、大阪へ)
2018.12.23 掲載
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