第5回目の氷川きよし明治座座長公演。アイドルの演歌スターと思っていたのが、刮目した。彼こそは演劇界の本物のエンターテイナーではなかろうか? 昨年はねずみ小僧で黒装束で頬かむり姿、今回は人気の旅役者として次から次へと色鮮やかな衣装をとっかえひっかえ、観客を楽しませてくれる。どこから台本で、何処からアドリブかわからないが、最初から最後まで中高年の多い女性陣が笑ったり、涙を流したり。
ストーリー
大津・寿座で笛と舞姿で大人気の嵐恋之介(氷川きよし)に、恩義のある師匠から江戸の舞台を成功させるためにぜひ助けてほしいとの文が届く。恋之介の育ての親、嵐源之丞(曾我廼家寛太郎)は反対するが、座長である佐野川権三郎(ベンガル)は借金から逃れるため、自分もついていくという始末。大津の興行を仕切る閻魔一家の女親分、お京(山村紅葉)は座頭佐野川権三郎に50両もの大金を貸しており、恋之介を京、大阪で大々的に売り出す約束となっていた。
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大人気の笛奏者・嵐恋之介(氷川きよし) |
三者三通りの思惑を描いて江戸に向かう道中で恋之介は育ての親である源之丞に、改めて感謝の想いを伝える。母の形見、朝凪の笛を吹いて母の面影を慕うと、その見事な笛の音色に街道を行き交う旅人から拍手とおひねりが飛ぶ。そこに地元のヤクザが現れて、断りもなく笛を吹いて商売をした、と、茶店の主人太吉を人質に連れて行ってしまう。恋之介は役者には役者のやり方があるといって、権三郎やお京の力を借りて一芝居打って太吉を助ける。女親分山村紅葉の変身ぶりが見事だ。
一方、江戸の笛の宗家、六条流の屋敷では跡目をめぐる騒動が持ち上がっていた。宗匠が急死した後、突如、古参の幹部が次期宗匠を宣言したのだ。彼は抗議する宗匠夫人、春絵を牢屋に閉じこめ、宗匠の証である朝凪の笛を差し出せと迫るが、春絵はとあるところに預けてある、と語る。
太吉を救い出した恋之介は自らの出生の秘密を知る。そして、稲葉雅楽頭の元に急ぐ。
笛の名門の後継者より、自由な旅役者の道を選ぶ恋之介に観客席から拍手とペンライトの渦が押し寄せた。
氷川きよしコンサート2018
「箱根八里の半次郎」、「恋之介旅日記」など鉄板のヒットソングに加えて五輪真弓の「恋人よ」や美輪明宏の「よいとまけの歌」まで自家薬籠中の物として、堂々と披露する氷川きよしは才能あるアイドルから、日本を代表するエンターテイナーになったことを印象づける舞台であった。(2018年10月4日 明治座)
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氷川きよしコンサート2018より |
2018.10.30 掲載
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