ジュリー・アンドリュース主演により世界中でヒットしたディズニー映画(制作1964年)とそのP.L.トラバースの原作から生まれたミュージカル版が遂に日本初演。制作はキャメロン・マッキントッシュ、作詞・作曲はシャーマン兄弟。
お馴染みの名曲数々にキレのよいダンス。崩壊しかけた家族をメリー・ポピンズは自ら修復する力をつけさせる。観客は最初から魅了され、“スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス”では舞台と客席が圧倒的な手拍子で一体となって盛り上がる。
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舞台は20世紀初頭のロンドン、上流階級入りを目指す銀行幹部職員ジョージ・バンクス家の生意気な二人の子どものナニー(保母兼家庭教師)としてメリー・ポピンズ(濱田めぐみ、平原綾香のダブル・キャスト)が舞い降りてくる。彼女の旅行鞄から次々と帽子掛けのポールや観葉植物が取り出されるのに目を見張る子どもたち。
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メリー・ポピンズ(平原綾香)、バート(大貫勇輔)と煙突掃除人たち |
メリー・ポピンズはバンクス家に自ら決定した勤務日程を告げ「上流社会はナニーに休日の変更を求めない」と釘を刺す。子どもたちへの主導権を握り無作法な態度は許さないが、お行儀のよいご褒美には煙突掃除人バート(大貫勇輔、柿澤勇人WC)も誘って魔術で変貌させた近所の公園での最高のホリデイに連れて行ってくれる。
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素敵なホリデイ。メリー・ポピンズ(濱田めぐみ)、バート(柿澤勇人)、 乳母車に載るジェーン(渡辺おとは)、マイケル(加藤憲史郎) |
厳格一方のナニーに育てられたジョージ(駒田一、山路和弘WC)は、子どもたちや妻ウイニフレッド(木村花代、三森千愛WC)への接し方がわからないまま不器用に仕事一筋の忙しい日常生活を送っている。ところが融資に失敗して無給停職に追いやられると、初めて子どもたちの父親に対する優しい気持ちを受けとめる時間が出来る。メリー・ポピンズの歌う「お砂糖ひとさじで」の心の余裕と思いやりの意味も理解し始め、また専業主婦として軽く見ていた妻の強さを銀行頭取との直接交渉で見て改めて妻の実力を認識する。
壊れかけていた家族が心を一つにして絆を取り戻し、一家で凧をあげる姿。役目を終えたメリー・ポピンズは(観客席上空を横切って)星空高く舞い上がってゆく。観客総立ちの拍手がこれまた今年最大だろう。
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“スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス” 爆発する全員ダンス |
濱田めぐみと平原綾香のメリー・ポピンズ、大貫勇輔と柿澤勇人のバートの歌とダンス、更に出番は短いがバード・ウーマンの島田歌穂と鈴木ほのかの存在感も見事だ。「メリー・ポピンズ」は間違いなく今年一番のハッピーなミュージカルだ。(東京3月25日~5月7日:東急シアターオーブ、大阪5月19日~6月5日:梅田芸術劇場メインホール)
2018.4.12 掲載
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