客席が暗くなると舞台の袖に現れた長身のギャングがマシンガンをぶっ放して銃弾でタイトルを描く…“BULLETS OVER BROADWAY” カッコいいオープニングだ。コメディアンであり、劇作家であるウディ・アレン(原作・脚本)は、ブロードウェイの裏表を熟練の手法で描き極上のエンターテイメントを提供してくれる。
狂瀾の1920年代禁酒法時代のニューヨークで、真面目な芸術至上主義の劇作家のデビッド(浦井健治)は既に2本の脚本を演出家と役者によって壊されたと嘆き、3本目こそ自分の手でブロードウェイに乗せたいとガールフレンドのエレン(愛加あゆ)と夢見ている。
ところがプロヂューサーが見つけてきた出資者はマフィアの親玉ニック・バレンティ(ブラザートム)。台詞もいえない大根以下の愛人オリーブをスターにしろと要求し、部下のチーチ(城田優)を監視役に送り込んでくる。
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劇作家デビッド(浦井健治)とマフィアの用心棒チーチ(城田優) |
主演女優のヘレン(前田美波里)は嘗ての人気と名声を取り戻そうと色仕掛けでデビッドに脚本の書き換えを迫り、名優だが過食症で女癖の悪いワーナー(鈴木壮麻)はオリーブと関係を持つ。個性的な女優イーデン(保坂知寿)は連れ歩く愛犬と共に周囲を掻き回し、御仕舞には稽古の様子をずっと見ていた監視役のチーチまで台詞の書き換えを口に出す。
デビッドは度重なる脚本や演出の変更で困惑の極みに達するが、チーチの提案こそ適切と気が付いたデビッドは彼の指示で脚本を書直し、やっと作品に生命が通う。てんやわんやの舞台稽古の最中に台詞の変更を口移しする強面のチーチと、それを必死で左利きで書き写す弱気なデビッドの騒動が観客を沸かせる。
頭でっかちの「芸術至上主義者」より市井のアンちゃんの方が人生の機微を知った脚本が書ける、とするところが自虐的ユーモアの姿勢を失わないコメディアン、作家、映画監督であるウディ・アレンらしい。
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大成功のフィナーレ |
オリジナル振付はスーザン・ストローマンでクラブの女たちのチャールストンやフフォック・スロットも楽しいが、迫力あるのはギャングの男たちのタップダンス。黒ずくめの男たちのパフォーマンスに客席から惜しみない拍手が送られていた。
因みに冒頭マシンガンをぶっ放したのは城田優のチーチ。彼に痛めつけられる弱気なデビッド役浦井健治とはまさに名コンビだ。(東京:2月7日(水)~2月28日(水)日生劇場、大阪:3月5日(月)~3月20日(火)梅田芸術劇場、福岡:3月24日(土)~4月1日(日)博多座)
2018.2.23 掲載
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