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新国立劇場2018-19シーズンラインアップ発表
東京から世界へ発信する劇場を目指す

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左から演劇部門新芸術監督・小川絵梨子氏、
オペラ部門新芸術監督・大野和士氏、舞踊芸術監督・大原永子氏

今秋から始まる新国立劇場ラインアップが発表された。オペラ部門新芸術監督に欧米の第一線で活躍する大野和士、演劇部門新芸術監督に意欲的な演劇活動を展開する若手の小川絵梨子を迎えたためか、通常の1.4倍、140人の記者が集まる盛況ぶりだった。


オペラ部門

大野和士次期監督は東京から世界に向かって発信することに強い意欲を示した。そのためには従来年間3本で回していた演目を4本とし、日本での新演出を海外のオペラ座と共同演出してWorld Premierとして海外に送る、日本人作曲家に委嘱する新作オペラ・シリーズの開始、内外新進演出家の起用、更に厳しいオーディションを前提として海外で活躍している日本人の新国立劇場での採用について進める。「イタリア人ならスカラ座、米国人ならメッツ(メトロポリタン劇場)、日本人なら新国立劇場公演を目指している筈だ」。

新シーズンの注目作品は2018年10月演出に新国立劇場初登場のウィリアム・ケントリッジを迎え、モーツァルト「魔笛」。2019年2月には創作委嘱作品・世界初演、西村朗作曲、台本佐々木幹朗の「紫苑物語」。原作は石川淳の幻想的な小説だが、ピットには東京都交響楽団を迎え大野和士自身がタクトをとる。


演劇部門

小川絵梨子演劇次期芸術監督は30代の若さで演出、翻訳に幅広く活動している。大人から子供までの観客層に演劇を届けること、演劇システムの実験と開拓、横のつながりとして内外の演劇の作り手との交流や連携を強めることを3本の柱に据えている。

観客動員についてはファミリーから大人までの広い層を目指す演劇を増やし、地方公演もさらに増やすこと。演劇システムの開拓はフル・キャストをオーディションで採用したり、開拓企画では「コツ・コツ」プロジェクトとして稽古の時間を1カ月や2カ月でなく一年をかけて作り手に試行錯誤で作品を練り上げさせる。海外の国立劇場では100のプロジェクトを同時進行させ、タイミングがあった時に上演するなどの例があると述べた。更に横のつながりとして、海外の演劇団体との連携やワークショップ協力などを目指す。

注目作品は2018年12月デヴィッド・ヘア作 小川絵梨子演出「スカイライト」新訳上演。2019年4月チェーホフ「かもめ」小川絵梨子翻訳 フル・オーディションで新訳上演。


バレエ&ダンス部門

舞踊芸術監督は大原永子。2014年に舞踊芸術監督に就任した大原永子監督の今期の課題も、日本人ダンサーの研修と観客動員。ゲスト・ダンサーは一時の刺激にはなるが、日本人のダンサーを育て新国立劇場のバレエ団が成長することが一番肝要という。更に公演の数を増やし、観客が気軽にバレエ観劇に劇場に立ち寄れることを目指したいという。

大原監督の観察では、日本ではプロ・ダンサーとして生活できないため日本人のダンサーは海外で活躍している。が、やはり新国立劇場で踊りたいとの希望が多いので、正規のオーディション日時でなくても、実績のあるダンサーには日本帰国時にオーディションを受けられるように出来ないものかと考えている。

注目作品は2018年11月の新国立劇場バレエ団による新制作の「不思議の国のアリス」。2019年5-6月の森山開次演出・振付・出演「NINJA」。

【特記】新国立劇場では3部門がそれぞれ独立した演目を提供してきたが、大野和士監督が中心となってオリンピック年2020に向けて全部門が協力して子どものための演目を企画する予定。

2018.2.19 掲載

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