「足ながおじさんより」の極付コンビ井上芳雄と坂本真綾が4年ぶりにクリエに戻ってきた。
ジョン・ケアード(脚本・演出)、ポール・ゴードン(音楽・作詞・編曲)、今井麻緒子(翻訳・訳詞)のDADDY LONG LEGS ~足ながおじさんより―ピアノ、ギター、セロ3人のシンプルなバンドの音楽に、井上芳雄の足ながおじさんと坂本真綾のジルーシャ・アボットが紡ぎだす舞台はいつ誰が観ても心温まる作品だ。
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1917年版「DADDY LONG LEGS」 |
筆者のデスク上にロンドンのホダー・アンド・スタウトン発行の紺色スエード革表紙の1917年版がある。ダディーとジルーシャのイラストが浮き彫りにされている。銀行家であった父が著名な経済理論蔵書の間に忍ばせておいたものだ。
欧米の、というより発売以来日本のビジネスマンの間でも隠れファンが存在していた作品をミュージカル化したのはジョン・ケアード、今井麻緒夫妻の功績だ。日本での成功を観てブロードウエイに逆輸入されたという。
ストーリー
最年長男子がいなかったため、たまたま孤児院の理事から大学への学費と裕福な同級生と同じ月35ドルのお小遣いをもらっていた孤児院の最年長女子で小説家志望のジルーシャ・アボット(坂本真綾)は、月一度の報告の手紙の宛名に、偶然後姿を見た理事の姿から「足ながおじさん」と記す。
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足ながおじさん(井上芳雄)宛に手紙を書くジルーシャ・アボット(坂本真綾) |
非社交的な慈善家ジャーヴィス・ペンドルトン(井上芳雄)は生き生きしたジルーシャの手紙に心を動かされ、姪の学校訪問を口実にジルーシャと面会する。次第に好意を寄せ始めたジャーヴィスにジルーシャは「足ながおじさん」への手紙に自分の気持ちを伝えだす。慈善家としての行動と恋愛感情への欺瞞性に悩むジャーヴィスの歌う「チャリティー」が渋い。
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ニューヨークを楽しむジャーヴィス・ペンドルトン(井上芳雄)とジルーシャ・アボット(坂本真綾) |
クラスでたった一人「若草物語」すら読んでいなかったジルーシャはフランス語、シェークスピアと勉学を進め遂に最優秀で卒業する。自分の小説の著作権から得た1000ドルの小切手を学費3分の1の返金として誇らしくジャーヴィスに渡し、今後の印税から返金し、更に友人と一緒に新しい感覚で孤児院を変革すると宣言する。
このミュージカルが日本各地で歓迎されると思うとうれしい。(シアタ―クリエ11月7日~24日 その後、福岡・兵庫・愛知で公演)
2018.1.1 掲載
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