ミニマムの舞台装置で生きる俳優の実力!
ほとんど舞台装置のない裸の舞台で、劇団四季の俳優たちが芝居の役柄ではなく役者個人としての力量で歌とダンスで勝負する。“Song & Dance”シリーズは従来加藤敬二が構成、振り付け、演出を担っていたが“65”では俳優の脇坂真人、松島勇気、永野亮比己も初めて振り付けに参加し、更に多彩なハイレべルのエンターテイメントになっている。
第一幕には「ウエスト・サイド物語」、「ライオン・キング」、「アンデルセン」など馴染みの曲に永野、松島が切れ味の鋭いダンスを組み合わせた他、新しい試みとしてフラメンコが入っている。劇団四季入団前にスペインで研鑽した女優多田毬奈の振り付けだが、3人の新振付師に並ぶ新しい才能に、この劇団の人的資産の豊かさを感じる。マリンバの演奏はチームワークが楽しい。
第二幕はディズニー作品とアンドリュ―・ロイド=ウェバー作品からが中心で「美女と野獣」、「エビータ」、「オペラ座の怪人」などの浅利慶太の日本語歌詞が初公演当時を偲ばせる。
来年創立65周年を迎える劇団四季は、劇作家加藤道夫氏を師と仰ぐ浅利慶太を中心とする慶応大学、東京大学の学生たち10人により1953年7月14日に結成された。当時、政治色に傾く新劇に対抗し、師のもとにフランス戯曲など優れた戯曲の演劇活動だけで成立する劇団を創り、やがてミュージカルにも発展するものになった。
創設チームの一人日下武史の今年5月の逝去を偲ぶ演出もあり「Song & Dance65」には劇団の伝統と未来への挑戦を感じさせる迫力がある。
11月26日の東京での千秋楽の後は全国巡業に向かう予定だ。ほとんど裸の舞台で勝負できる俳優とスタッフたちは従来の劇場だけでなく、公民館や学校の講堂など観客と密接に近い場所で公演できる筈だ。2020年、現在竹芝地域開発中で閉館となっている「春」「秋」劇場が再オープンした時、彼らは演劇人として更に鍛えられて戻ってくるのではなかろうか?(10月5日~11月26日 劇団四季自由劇場)
2017.11.10 掲載
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