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ミュージカル「レ・ミゼラブル」

あの世界的名作ヴィクトル・ユーゴー原作のミュージカル「レ・ミゼラブル」が日本初演30周年記念公演を迎えた。

この壮大なミュージカル(プロデューサー キャメロン・マッキントシュ 作・オリジナルフランス語脚本アラン・ブーブリル 作・音楽クロード=ミッシェル・シェーンベルク)は、1985年のロンドン初演のオリジナル版を観た東宝演劇部の責任者が日本公演を即断、その後は2013年の新版を公開し、今年帝国劇場で日本初演30周年記念公演を迎えた。

筆者はこの作品をブロードウエイ初演のオリジナル・キャスト版で観劇した。最初の監獄で鎖につながれた囚人たちの“Look Down, Look Down…”の重厚な男声コーラスにカットインしてくる刑事ジャベールの鋭いバリトーンにまず圧倒された。

飢える妹の子供のために一塊のパンを盗み、脱獄を繰り返したことから19年もの間獄につながれたジャン・バルジャンが仮釈放を得て産業革命以前の18世紀末のフランスの民衆の中で生き抜く。この作品に「軽快で楽しいのがミュージカル」という筆者の既成観念が見事に覆された。こんな重厚な作品がオペラでなくミュージカルとして存在できるのか!?

ミュージカル「レ・ミゼラブル」

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ファンテーヌの“夢 やぶれて”、幼いコゼットの“雲の上のお城”、エポニーヌの“オン・マイ・オウン”などアルト、メゾ・ソプラノの女声が語りかける夢に、ジャン・バルジャンの“独白”、ジャべールの“星よ”、バリトーン、テノールの男声が現実の冷たさを示す。

一幕の終わりのアンジョルラスと学生達が革命を求めて歌う“民衆の歌”は客席を震わす迫力がある。

戦う者の歌が聴こえるか?
鼓動があのドラムと響き合えば
新たに熱い命が始まる
明日が来た時 そうさ明日が!

列に入れよ 我らの味方に
砦の向こうに世界がある
戦え それが自由への道

ミュージカル「レ・ミゼラブル」
バリケードに立てこもって戦う学生たち

二幕に入ってアンジョルラスが率いる学生たちは砦に立てこもり、無産者階級の民衆たちの救援を心待ちにするが、いざ市街戦が始まると彼らは理想主義の坊ちゃんたちを見捨ててしまう。ジャン・バルジャンはエポニーヌの知らせを受けて駆け付け、全滅した学生たちの中からコゼットの恋人マリウスを見つけて下水道を伝って辛うじて逃れる。

言葉にならない痛みと悲しみ
空の椅子とテーブル
友はもういない
自由を夢見て炎と燃えて
共に歌ったその日は来ない

ミュージカル「レ・ミゼラブル」
市民の援軍は来ない

「レ・ミゼラブル」はトリプル・キャストの超豪華版だが、海宝直人のマリウスの歌声には若者らしい爽やかな哀感が溢れている。(帝国劇場 7月17日まで)


2017.7.9 掲載

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