オープンリールのテープレコーダーが発する無機的なテクノ・サウンド。機械仕掛けの人形振りで街を歩く人々。しかし東京タワーに登って結婚を誓うのは真鈴(高畑充希)と悟(門脇麦)の爽やかな小学生カップル。夜空に飛び出す二人を見てパニックに陥る群集の異常な動き。
1982~86年にビッグコミックスピリッツ(小学館)に連載された楳図かずおのSFマンガがフランスの気鋭振付・演出家フィリップ・ドゥクフレによってミュージカルとなった。
原作は30年前の作品にも関わらず、「わたしは真悟」は今、ここにある現代の人工知能(Artificial Intelligence)やネット社会(Internet of Things)を予言したような刺激的な舞台となっている。
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巨大なアームを持つ産業用ロボット本体を見る悟の友人しずか(大原櫻子)とロボットの心、真悟(成河) |
恋する二人は何も知らないまま子どもを作ろうとする。すると工場で働く産業用のロボット(歌舞伎のように黒子が動かす)に奇跡が起こり心を持ち始め、両親から一字ずつもらって真悟と名乗る。心の真悟を演じる(成河)は重力と空間をやすやすと超える超人的パフォーマンスを見せる。
大人たちによって引き裂かれた両親を求めて心の真悟は産業用ロボットと共に海外に向かうが・・・。
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真悟(成河)の重力を無視した超絶演技 |
時空を一コマで超越させる劇画と比べるのは厳しいが、アルベールビル・オリンピックの開会式や閉会式の演出やシルク・ドウ・ソレイユの演出で知られるドゥクフレは映像、影絵、マンガ等を組み合わせて楳図ワールドを表現しようとしている。今回の使用言語は日本語だが、フランス語、英語、韓国語等になっても違和感はないだろう。
輸入超過のミュージカル界において輸出可能の個性的な作品が生まれたようだ。(東京公演2017年1月8日~1月26日/新国立劇場中劇場)
2017.1.22 掲載
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