イギリス文豪チャールズ・ディケンズの死去により未完のまま終えたことを逆手に取り、288通りもある結末を観客の投票で決めるという「エドウィン・ドルードの謎」の趣向は見事に成功して、幕開けからフィナーレまで顧客満足度100%。
さて、ロンドンのロワイヤル音楽堂では座長山口祐一郎が登場人物を紹介。劇中劇「エドウィン・ドルードの謎」の上演が始まる。
主役のエドウィンは8年前に宝塚を卒業した元トップスターの壮一帆。ローザ・バッド(平野綾)との結婚後はエジプトに渡り、ツタンカーメンの墓から石を引っぺがし、カイロからアレキサンドリアまでの道路を建設して大金持ちになろうと意気軒高だ。退団後初のミュージカルに昔と変わらず颯爽とした男装で出ているが、途中女装になってからの宝塚アクセントの関西弁の捨て台詞が秀逸。正にコメディアンヌの誕生だ。
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エドウィン・ドルード(右/壮一帆)とジャスパー(左/今拓哉) |
エドウィンの叔父のジョン・ジャスパー(今拓哉)は彼の婚約者ローザに異常に執着。聖歌隊の敬虔な指揮者でありながら人目を忍んでプリンセス・パファー(保坂知寿)が経営する阿片窟に通っている。このパファーもローザには格別の親しみを持っているようだ。
その他、セイロンから来たヘレナ・ランドレス(瀬戸カトリーヌ)とネヴィル・ランドレス(水田航生)の双子姉弟。クリスパークル牧師(コング桑田)。それぞれ一騎当千の役者たちが座長、司会、チョイ役など務める山口祐一郎の膝元でハジケまくる。
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左からエドウィン・ドルード(壮一帆)、ローザ(平野綾)、ネヴィル(水田航生) |
クリスマスの夜、ジャスパー邸のパーティーでエドウィンがネヴィルと喧嘩したまま戸外に飛び出したところでパーティーはお開きとなる。エドウィンは誰かに殺されたのか、それとも生きながらえているのか。町中が疑惑で沸き立つが彼の行方は知れず。
6か月後、パファーと謎の探偵ディック・ダッチェリーが街に到着したところで、ディケンズは筆を折る。
この作品の脚本・作詞・作曲を手掛けて1986年度のトニー賞各部門をほとんど独占したルパート・ホームズの大胆な仕掛けはこの話の結末を観客の手にゆだねたこと。
果たしてドルードを殺した犯人は誰だ? ドルードに替わってローザのハートを射止めるのは誰だ? 番号札を手に舞台に並ぶ面々を眺めながら観客は思い思いに札を入れ、役者たちには集計に従って結末の台詞が与えられる。
意外な犯人と突飛な恋人、次は誰が選ばれるのかもう一度観劇したいものだ。(東京4月4日~4月25日/シアタークリエ、大阪4月28日~5月1日/サンケイホールブリーゼ、名古屋5月4日~7日/中日劇場、福岡5月14日~5月15日/福岡市民会館)
2016.4.20 掲載
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