石丸幹二が人気ミュージカル“ジキル&ハイド”に4年ぶりに主演。 原作R.L.スティーブンソン、音楽・フランク・ワイルドホーン 脚本・作詞レスリー・ブリッカス。 濱田めぐみはブリッカスがミュージカルのために創作した娼婦ルーシー・ハリス役で大熱演。
栄耀栄華を誇る特権階級
舞台は19世紀ヴィクトリア朝の大英帝国。貴族や僧侶など上流階級は科学と産業の発展で栄耀栄華を誇るが、庶民は階級や偏狭な宗教上の重圧に苦しんでいる。
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偽善と貧困が渦巻く19世紀のロンドン |
医師のヘンリー・ジキルは精神を病む父親のために人間性を回復させ、ひいては人間の善と悪とを分離する薬を研究している。これは「神の領域、神を冒涜する理論」として婚約者エマの父、ダンヴァ―ス卿や友人のガブリエル・ジョン・アターソンに反対されるが、最後の実験段階として人体実験の許可を病院に申請する。しかし、大司教、侯爵夫人、将軍などからなる病院の最高理事会は5票反対、1票棄権の採決で却下する。(棄権はダンヴァ―ス卿)
「どん底」
ジョンは国家的権力には逆らえないとジキルを諭し、国家的偏見だと怒る彼を気晴らしのためにと売春窟「どん底」に連れてゆく。
そこで出会ったのが売春婦のルーシー・ハリス。彼女の「自分で(私を)試してみたら?」という誘いを、ヘンリーは自ら人体実験を試すべきだと誤解し研究室へ急ぐ。
試薬を一口で飲み終えるとジキルは七転八倒。やがて恍惚感が湧き上がってくる。代表曲“時が来た”をハイ・バリトンで歌い上げる石丸のイメージはやはりテレビ「半沢直樹」の悪徳支店長でなく元劇団四季のプリンスだ。
変身したジキルは生真面目な研究者から自由奔放なハイドに変身し、“生きている”を高らかに歌いながらロンドンの闇に消える。
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ジキルの手紙に癒されるルーシーにハイドの影が |
大惨殺事件
そのロンドンでは新聞売り子が走り回る。「事件だ、事件だ!」。人々が争って手にした新聞は、表向きは敬虔な(少年愛嗜好の)大司教、慈善家を装う(新聞に載ることが目的の)侯爵夫人などの偽善者たちが次々と惨殺されたことを伝える。
ジキルはハイドに受けた傷の治療に訪れたルーシーの身体に残る残虐な傷跡を見て、この実験によって自分がコントロールを失ったことを知る。一方ルーシーはジキルと出会って娼婦の自分にも恋ができるかもしれないと「あんな人が」を純真な乙女のように恥じらって歌う。元劇団四季の石丸と濱田の存在がワイルドホーンとブリッカスの作品をさらに魅力的にしている。
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ルーシー(濱田めぐみ)とエマ(笹本玲奈)左より |
さて、赤い試薬でハイドとなり、青い試薬でジキルに戻る試薬の副作用は突然のフラッシュ・バック。結婚披露宴でエマと腕を組んで現れたジキルはどうなってしまうのだろうか? (東京:2016年3月5日~20日 東京国際フォーラムホールC/大阪:3月25日~27日 梅田芸術劇場メインホール/名古屋:4月8日~10日 愛知県芸術劇場大ホール)
2016.3.20 掲載
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