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「西の宝塚、東の東大」と称される入学超難関の宝塚音楽学校で、「清く正しく美しく」をモットーに研鑽した卒業生で構成する宝塚歌劇団がこの4月、100周年の節目を迎える。

「眠らない男 ナポレオン」(作・演出/小池修一郎、作曲/ジェラ—ル・プレスギュルヴィック)は、フランス革命を舞台にコルシカ島の下級貴族出身のナポレオン・ボナパルト(柚希礼音)が士官学校、最高司令官、皇帝と眠る間も惜しむ努力で登りつめていく軌跡と、社交界の華、2児の子持ち未亡人、ジョセフィーヌ(夢咲ねね)への愛と葛藤を描くスペクタクル超大作。まさに次の100年を目指す日仏合作のミュージカルだ。

「余の辞書に不可能という言葉はない」と時代を駆け抜けたナポレオン。
  小池が複雑なフランス革命とナポレオンの人間関係の関わりを観客に理解させるのに、元ナポレオンの副官マルモン元帥がナポレオンの息子ナポレオン二世に語る回想形式にしたのが親切だ。

柚希の軍服姿はあくまでも凛々しく、皇帝となって妻ジョセフィーヌに王冠を授ける場面はルーブル美術館を飾るダヴィッドの「ナポレオン一世の戴冠式」そのものの荘厳さだ。
  一方、民衆に背かれて舞台を去る柚希の後姿には頂点を極めたものの哀感が漂う。

夢咲のジョセフィーヌは、残念ながら子持ちの未亡人で若い士官をたらし込む性的魅力に欠ける。あくまでも「清く正しく美しく」の「宝塚産」悪女としての可愛さがいとしい。

脇を固める外務大臣タレーランの北翔海莉と、ナポレオンの母レティツィアの美穂圭子が宝塚の伝統の重さを感じさせる。

「さよなら 皆様さようならごきげんよう・・・」昔から宝塚のテーマ・ソングをBGMに会場を後にする観客から「この歌を聞いてやっと気分が落ち着いた。舞台の展開も歌の調子も速すぎる」という声が聞かれた。

ブロードウエイやウエスト・エンドのミュージカルのように速いテンポの舞台で海外を目指すのか、懐かしいテンポで古くからのファンを大切にするのか。次の100年にむかっての新生宝塚の課題であろう。

なお、この公演にプレスクラブ恒例の団体観劇会を当てたが、参加した外国人会員たちから「初めて宝塚レビューを見たが美しさと迫力に圧倒された」との声が寄せられた。

歌舞伎は男性が女形を務め、宝塚は女性の男役がトップを務める。日本固有の舞台芸術として今後グローバルに展開できるのではなかろうか。(3月29日まで 東京宝塚劇場)

2014.3.28 掲載

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