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劇団四季Song & Dance 60 ようこそ劇場へ

劇団四季創立60周年を記念した“Song & Dance 60 ようこそ劇場へ”は斬新なダンスと懐かしい曲に溢れた舞台だ。構成・振り付け・演出のトップ・ダンサーで俳優の加藤敬二は「お客様に四季のナンバーの1曲1曲を自分の人生と照らし合わせていつもと違う楽しみ方をしてほしい」と話すが、曲ごとに「これは自分が独身時代に初めて劇団四季で観た舞台、この時には子どもたちを連れてきていた。担任の先生の許可を得て孫たちにやっと見せたミュージカルがこれ!」と感激。このステージには筆者のみならず、劇団四季三世代ファンの家族史と舞台への感動が交差しているようだ。

オーヴァチュアで幕が開いたその後、シンプルな二色の衣装で現れたキャストは「すべての山へ登れ」。家族ミュージカルで最も愛されている「サウンド・オブ・ミュージック」からの選曲だ。「ようこそ劇場へ」レオタード姿でのバー・レッスン。「アプローズ」に続いて法被姿の戦国時代の新聞屋「おれはひろめ屋」は“むかしむかしゾウがきた”のナンバーだ。

劇団四季Song & Dance 60 ようこそ劇場へ

“魔法をすてたマジョリン”、“人間になりたがった猫”、“夢から醒めた夢”。圧倒的に多い家族ミュージカルからの曲に“アスぺクツ・オブ・ラブ”、“アイーダ”等、アンドリュー・ロイド=ウエバー、エルトン・ジョンの曲が続く。第一幕最後の「ビー アワ ゲスト」でシルク・ハットにステッキで粋に決めたダンスが圧巻だ。


第二幕に入ると劇団四季昭和史ミュージカル“李香蘭”、“異国の丘”など。“南十字星”では馴染みの曲にガムランが響き渡り、客席を通って舞台に上がるヴァージョン・アップしたバリ・ダンサーが魅惑的だ。

劇団四季Song & Dance 60 ようこそ劇場へ

サプライズは観客を的にしての風船射的と、客席が五色のカードから選んだ一枚での演目の決定。黄色のカードで“ライオン・キング”からの「早く王様になりたい」のボクシング・シーンでは、観客は爆笑に次ぐ爆笑。

舞台と客席が一体となったのはキャスト全員が歌う「共にいてアルゼンチーナ」。劇団四季のこれまでの歴史と観客も含めての劇団四季の家族にとって、これは自分たちの60年の生きざまを振り返る歌のようで客席でハンカチを出す人たちが目立った。

最後のナンバーは“イリヤ・ダーリン—日曜はダメよ!”より「ヤ・ハラー・バイ・バイ・バイ」。

    どうぞお幸せに、
    また、おいで
    愛はいつでも変わりはしない
    いつまでも貴方のままおいで
    愛はいつでも変わりはしない

劇団四季からの長年の忠実な観客に贈るメッセージだろう。

ちなみに今回のSong & Dance 60にはほとんど舞台装置はなく、分割するひな壇、舞台背後のミラー、回り舞台、裸同然の舞台上で、団員たちは加藤敬二の指導の下、舞台人としての魂と技量を示していた。(四季劇場「秋」11月24日まで)

2013.11.11 掲載

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