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ミュージカル「二都物語」

「二都物語」(原作/チャールズ・ディケンズ、脚本・作詞・作曲/ジル・サントリエロ、翻訳・演出/鵜山仁)は文豪チャールズ・ディッケンズの世界的ビリオン・セラーをミュージカル化したもの。2008年のブロードウエイ初演では同じくフランス革命を舞台とした大作「レ・ミゼラブル」と比較されて「レ・ミゼ」のミニバン、「凡庸」と叩かれ、ニューヨーク・ポストでは演劇評論家クライヴ・バーン氏に“It should be far, far better”と指摘された。しかし、東京公演では台本は同じでも、日本の実力スターたちの好演によって“far better”ミュージカルを生み出している。


ストーリー

背景は18世紀後半、フランス革命を目前にしたパリとロンドン。この二都を舞台に貴族でありながら自分の階級の暴政を嫌って英国に亡命したチャールズ・ダーニー(浦井健治)と、人生に絶望して酒浸りの英国弁護士シドニー・カートン(井上芳雄)が主人公。姿かたちの似ている二人は、同じ女性ルーシー・マネット(すみれ)を愛してしまう。

ミュージカル「二都物語」

彼女の父、マネット医師は、チャールズの伯父サン・テヴレモンド侯爵により無実の罪で17年間もバスティーユ牢獄につながれ、やっと民衆運動の拠点を守る居酒屋の主人ドファルジュに保護されたのである。

マネット家とロンドンに向かったチャールズは伯父の策略で裁判にかけられるが、シドニーの弁護で助けられる。ルーシーと結婚して一女を儲けたが、無防備にも昔の使用人を救うためフランス革命前夜のパリに戻ったところ民衆裁判にかけられ、バスティーユ牢獄に投獄される。

ミュージカル「二都物語」

ルーシーを愛するシドニーは彼女と彼女の愛する家族のためパリに渡り、牢獄でチャールズとすり替わる。ギロチンに向かって処刑台を上るシドニーを満天の星たちが煌き輝いて迎え入れる。


脇役はベテランぞろい

井上芳雄、浦井賢治とすみれとの甘いラブ・ストーリーに「二都物語」の歴史的存在感を加えているのが岡幸二郎(サン・テブレモンド侯爵)、橋本さとし(ドファルジュ)、今井清隆(ドクター・マネット)、福井貴一(バサード)など重量クラス。

中でも圧巻は濱田めぐみ。居酒屋ドファルジュの女房テレーズ・ドファルジュは、ギロチンに送る氏名リストと罪状を編み針で編み込んでいたフランス革命史上もっとも恐れられた女性で、元劇団四季のスター濱田めぐみが「見えない場所で」貴族に対する恨みつらみを凄みを利かせて歌い上げる。

ミュージカル「二都物語」

“私たちはここにはいない 奴らの目には何も見えない だれが死んでも笑っている・・・・思い知らせるその時まで息を殺し どこにもいない あたしたちは いまここにいる”

主人公役のすみれがベテラン脇役たちから学んで“far better”なミュージカル・スターに成長するのを期待したい。(帝国劇場8月26日まで)


2013.7.26 掲載

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