「Gay」だ「Lesbian」だと今まで同性愛をテーマにしたお芝居を「人権問題だから」と構えて観劇していたのがどんなに時代遅れだったかを気づかせてくれる、明るい、軽やかなタッチの話題作だ。
「ザナ」(脚本・音楽・歌詞/ティム・アシード、演出・訳詞/小林香)はLGBT(ゲイ、レスビアン、バイ・セクシャル、トランス・ジェンダー(性転換者)など性的マイノリティーばかりではなく、あらゆるマイノリティーの人々が差別されことなく自分らしく生きることを提言している。
ストーリー
アメリカ中西部の町ハ—ツビルでは、同性同士のカップルが正常で異性同士のカップルは異常とされている。魔法の力をもつ高校生のザナはコンパニオンの小鳥シンディーと心を合わせてスティックを一振り、同性同士の幸せなカップルを次々と誕生させる。
そんなある日、転校生のスティーヴがやってくる。優等生のケイト、校内ラジオのDJタンク、プロム(卒業祝いダンス・パーティー)委員のキャンディーたちは仲間として受け入れる。ところがマイクの書いた「軍隊において異性愛が認められるか」がテーマのミュージカルを上演する事になって周囲は大混乱。
「聞かないで 言わないで」、同性愛を告白しない限り正常として軍人として認めるという米軍の矛盾の指摘。「Straight to Heaven」「Right to Heaven」「僕が僕であるように」は、キャストの若者たちの機敏なダンスとセンスある歌詞が光っている。
恋のキューピッド役だったザナにも大きな変化が訪れる。筋骨隆々としたザナ(田中ロウマ)の突然のハイヒール姿は哀切を呼ぶ。異性愛が異常とレッテルを張られる社会を目撃して、観客は同性愛を異常としてきた社会の偏狭さを改めて考えることになる。
オバマ大統領同性婚支持
二期目の当選を果たしたオバマ大統領は1月の就任演説で「同性愛者の法の下での平等」を訴えた。米国の世論調査でも同性婚支持が53%と過半数を超えている。
2004年マサチュセッツ州で始まった同性婚合法化の動きは現在10州までに拡大。しかし、州レべルに留まり、連邦政府は婚姻と認めていない。
連邦裁判所は「結婚は男女の結合」と定めた合衆国法、結婚保護法が「法の下の平等」に反するかどうか、この6月に判断を下す。
現代社会が避けて通れぬ差別問題を軽快なミュージカル化したティム・アシードと、これを日本に紹介した小林香の才知と決断に敬礼。(2013年2月18日〜23日まで シアタークリエ)
2013.3.14 掲載
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