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Dramatica/Romantica W Show-ism III

舞台には余計な大道具を置かず裸同然とし、客席中央に突き出たのは8メートルランウエイ。小道具は主演者自身が移動するので観客の気を散らす黒子の姿は1人も見えない。歌に合わせて次々変わる衣装をまとった出演者に歌唱力とトークのセンスだけで観客と勝負させる。(構成・演出 小林香、美術:松井るみ 衣装:屋島裕樹)

昨年の初演で観客を圧倒した5人のミュージカル・スター、井上芳雄、新妻聖子、金志賢、知念里奈、彩吹真央が都会の実験的演劇空間ステラホールに集結した。今回のテーマは「生きようドラマチックに!生きようロマンチックに!」

ショウはミュージカルと映画音楽の印象深い名曲を新編曲で構成。ミュージカル界大看板の井上と新妻が、韓国出身の金、沖縄出身の知念、元宝塚男役の彩吹ら個性派3人を同格に扱っている演出が今日的だ。

金が歌う「ライオン・キング」のアカペラ“サークル・オブ・ライフ”はパンチがあり、「キャッツ」の娼婦猫グリザベーラの歌「Memory」は余情がある。井上が「小学校4年の時キャッツを見てミュージカルを目指すようになった。娼婦に魅入られたらしい」とトークでフォローして観客の笑いを誘う。

“5人の女性たち”がランウエイで豪気に歌い踊るミュージカル「Chicago」中の“Cell Block Tango”(監獄タンゴ)“ヤツのせいよ”は大受け!
「散弾銃を二発打ちこんだのよ。これ以上膨らますなと言ったのにガムを膨らませたから・・・ヤツのせいよ」
  4人の女囚たちが次々と殺人を殺した男のせいにするところに5人目の“女性”井上が加わって
「台所でチキンをカットしていたら彼が10回もナイフに飛び込んできたのよ。ヤツのせいよ!」
客席に迫出したランウエイが観客との交流を盛り上がる。

映画音楽特集では、知念の歌う「イタリア映画」には男装に戻った彩吹と井上が粋に寄り添い、「フレンズ・フォーエバー」でベッド・ミドラーが歌った名曲 “Wind Beneath My Wing”は新妻がメインではなく、彩吹のソロに新妻がハーモニーをそえる、「Romantica」ならではのアレンジ。
  新妻聖子が存在感を示したのは“Fly”白いドレス姿でランウエイに毅然とそびえたちながら、歌声は優しく観客の心に寄り添う。

アンコールの“Let Me Entertain You”で俳優と観客が一体となる。こんなカッコイイ劇場空間での粋なライブがたった3日間で終わるのは惜しい。


2011.7.10 掲載

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