江戸時代の読本ベストセラー、曲亭馬琴の「南総里見八犬伝」は歌舞伎、映画、マンガなど多くのバージョンを生んだが、劇団AND ENDLESS主宰の西田大輔はこの原作を華麗なバサラ剣劇時代劇に仕立てている。
冒頭は真っ暗な舞台。やがて土砂降りの雨に雷鳴が轟く中、妖刀村雨丸の姿がみえる。
亡き父の約束を果たすため、犬塚信之(高橋一生)は許嫁の浜路(大和田美帆)を浜路の家に仕える幼馴染の犬川荘助(中村誠治郎)に託し、村雨丸を足利将軍家に届けるため旅に出る。そこに現れたのは、夜な夜な信之の夢に現れていた僧侶の金椀大輔(羽田裕一)。同じ牡丹の痣と不思議な球を持つ七人の仲間を探せと告げる。
ところが荘助も同じく黒い牡丹の花と不思議な球を持っている。信之を愛する浜路と共に彼を追いかける。病気の母を因業な芝居小屋の親方に人質にされ、女田楽師として日夜舞台を務める犬坂毛野(古川雄大)など旅の途中で剣を交えた剣士たちは、実は同じく不思議な球と痣を持つ八犬士の仲間。再び現れた金椀は、八犬士たちが心を合わせ妖刀村雨丸の因縁を断ち切れと教える。
一方、村雨丸を狙って影衆を率いて信之たちを襲うのは謎の女玉房(保坂知寿)。この玉房は霊犬八房の化身なのだろうか?保坂は刀を振り回す若者をクジャクの扇一本であしらう貫録ぶり。仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌の珠を与えた伏姫と八犬士の関係が分かりづらい。
分かりやすいのは縦横無尽に展開する舞台に突如モクモクと出現した白い大きな「お父さん犬」。バサラ監督は観客サービスのジョークも仕掛ける。
信之の高橋、荘助の中村は素直で闊達に動き、他の6名の犬士たちの個性的なアクションは面白い。特筆すべきは女田楽師を演ずる古川で、両性具有の官能美で会場を魅了する。
フルスピードで上下左右につっぱしる若者たちの殺陣と伴奏のロック・ミュージックが見事にシンクロナイズする緊張感。これぞアクション時代劇の醍醐味である。
中村 中による主題歌「犬守の唄」は恐ろしいようでもあり、懐かしいようでもあり、霊犬八房と伏姫の結びつきから始まる伝奇物語の雰囲気を上手く作っている。
「深説・八犬伝」は更に展開する壮大なプロローグとのことである。次なる舞台が楽しみだ。
(シアタークリエ 2月24日まで)
2011.3.4 掲載
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