「真夏の夜のフラメンコ」ならぬ「真冬のフラメンコ」で日比谷界隈は賑わっている。
異色のフラメンコ・ミュージカル“Zorro”がV6の坂本昌行のゾロ/ディエゴで日本公演の幕を開けた。ゾロ(スペイン語で狐)といえばサイレント映画時代のダグラス・フェアバンクスから始まってタイロン・パワー、アラン・ドロンなど歴代伝説のイケメン名優のあたり役、果たしてV6の若いお兄さん俳優に務まるのか?と懸念していたが、これは全くの杞憂。
「役が俳優を育てる」というのか、坂本昌行の優雅さの中に秘めた野性。野性が覆い隠せない育ちの良さが表れた、というか。正にドンピシャリのゾロ役といえば、褒めすぎになるだろうか?
ジプシー・キングスの音楽が今回の“Zorro”(原作:ジョンストン・マッカーレ、脚本・歌詞・原案:スティーヴン・クラーク)に命を吹き込んでいる。
開幕冒頭のジプシーたちの行進、バルセロナの裏通りのジプシー集落での“バイラ・メ〜さあ踊ろう”から始まり、フィナーレのフィエスタまでフラメンコ漬けだ。
アントニオ・カラスコのギターと歌、ソニア・ドラドのダンスなどが、この異色ミュージカルに厚みを加えている。
自由を求める村の女たちのフラメンコには静かな底力があり、2幕のオープニングでのギタリスタのカンターレに合わせた男女6人の詠唱が観客の心にズシンと響く。
島田歌穂のジプシー娘イネスは儲け役。ディエゴがスペインからカルフォルニアに戻ってゾロとなり、ラモンの圧政から父と村人を解放するのを助ける。ラモンの右腕ガルシア軍曹を誘惑して酔っ払わせる場面が楽しい。
大塚ちひろのルイーズは第一幕では清純なばかりのお嬢さんと見えたが、第二幕のジプシー村に逃げ込んでからは大変身。白いドレスを赤に代えられセクシーに踊りだす。フラメンコ特有の手指の捌きと手首の回転が抜群に上手い。
石井一孝のラモンは憎まれ役だが、村の領主であるアレハンドロ総督が実の息子ディエゴだけを可愛がって養子の自分を疎外していたと嘆く姿には同情できる。
この舞台はラモンとルイーズの結婚式場に空中から現れたゾロとの大剣劇で最高潮となる。 チャンチャンチャン・バラバラ。チャン・バラ・バラ・・・この動きにジプシー・キングスの音楽が又ピッタリあう事!
“Zorro”はストレス発散に最適の大活劇ミュージカル。 観劇はぜひとも 舞台・会場一体となってのフィナーレのサパティアードに耐える靴で。(日生劇場1月13日〜2月28日)
2011.1.30 掲載
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