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笹本と新妻の華麗なる競演「PRIDE」

ストレイト・プレイでありながら、ミュージカルより歌のインパクトが強烈だ。
  ミュージカル界の二大歌姫、新妻聖子と笹本怜奈の二人が冒頭でデュエットする“Wind Beneath My Wings”には背筋に戦慄が走った。

「キーは私のでいいかしら、少し下げます?」麻見史緒(笹本怜奈)
  「いいえ私が合わせます」緑川萌(新妻聖子)

チクチク反発しながらデュエットを始めた二人だが、歌っているうちに段々と、お互いが実力以上のハーモニーを生み出せることに惹かれてゆく……。

もともと“Wind Beneath My Wings”は女性二人の友情を描いた映画"フレンズ・フォーエバー"(原題“Beaches”)でベッド・ミドラーがソロで歌いあげたアメリカン・ポピュラーだが、笹本が主唱、新妻が応唱、次には新妻が主唱、笹本が応唱。同じ旋律を順次二人で交互に歌いあげるバロック・フーガ形式のデュエットはこのドラマのテーマを端的に表現し、またミュージック・ナンバーとしても新鮮だ。(音楽:佐橋俊彦 演出:寺崎秀臣)

プライド

“Pride”は一条ゆかりの12巻累計300万部以上も売り上げた第11回文化庁メディア芸術祭マンガ部門最優秀賞受賞作品を脚本家の大石静が舞台化したもので、大勢の登場人物はオペラ歌手志望の麻見史緒、緑川萌、クラウン・レコード社長の神野隆(鈴木一真)、ピアニスト池之端蘭丸(佐々木喜英)の四人に見事に整理されている。

イタリア留学をかけたクラウン・レコードのコンテストで本命視されていた、オペラ歌手を母に持つ裕福な家庭で育った史緒は、貧しい母子家庭で育った萌の策略で失声、優勝を逃す。神野と婚約した史緒はその代償としてウイーンへ留学。史緒を愛する蘭丸も神野の世話でニューヨークのヴェテランピアニストの助手となる。

「人はやりたいことがあれば土下座もするし靴の裏も舐める」
  強烈な萌の言葉にお嬢様らしく立ちすくむ史緒の姿。その二人も蘭丸とSRMグループを組み蘭丸が作曲した“Invocation”(祈り)と“Life”(命)では至極のフーガを組みあげる。

三人の運命に決定権を持つプロデューサーの神野は彼等との関係をどう組みたてようとしたのか?


「貴女と歌えたことは私の誇りよ」
  謝罪のために訪れた萌の臨終の場で、史緒が萌の遺児を育てると誓う。

「愛される子に、プライドを持って生きる子に」と願う萌。
  「萌さんのように愛に溢れた子に、プライドを持って生きる子に」と応える史緒。

この作品は同世代で日本のミュージカル界のトップを争う好敵手の笹本と新妻の存在なくしては実現しなかった企画であろう。

今年の流行語に「女子会」がある。シアター・クリエ支配人の山崎奈保子さんによれば、この演目にはアラ30−40の女性グループが目立つそうだが、正に「女子会」の団体観賞にピッタリの音楽劇だ。
(東京公演:シアター・クリエ 12月1日〜19日、大阪公演:浪切ホール 12月22日、名古屋公演:名鉄ホール 12月23日)

2010.12.16 掲載

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