劇団四季「55 Steps SONG & DANCE FINAL」(構成・振付・演出:加藤敬二)は、圧倒的なパワーで観客を興奮と感動の渦に巻き込んでゆく。
上演時間2時間半の間、政治不信、外交力ゼロへの憤慨、デフレへの不満、失業増加への不安など、日頃、重くのしかかる閉鎖感から解放されて観客はダンサーと共に躍動し、シンガーの歌に共感する。(一場面例外はあるが)
劇団創立55周年記念作品として2008年東京で開幕した作品は、全国をツアーしてFINALとして東京に戻ってきた。
加藤敬二はこれまでの四季ミュージカルの名曲の数々をアレンジして、独特の切り口で再構成する。「ライオン・キング」の"早く王様になりたい"の場面はK1のコミック・リングとなり、チビッ子ファイターが美女の応援を背に大男を倒す。加藤が飄々とセコンドを演じるのもご愛嬌だ。
「サウンド オブ ミュージック」"ドレミの歌"は"ドはドーナツのド"ではなく"ドアを開ければ"と劇団四季オリジナルの訳となっている。恒例の観客参加では、舞台に上げられた男女のお客さんたちが緊張したり、ノリにノッテとちったりして、観客席から爆笑と大拍手をうける。
「美女と野獣」からの"ビー・アワー・ゲスト"のタキシード ダンサーたちは劇団四季ならではの抜群の華麗さと迫力で観客を圧倒する。流石に加藤敬二軍団だ。
「キャッツ」から嫋々と歌われる"メモリー"、「オペラ座の怪人」の"ミュージック・オブ・ザ・ナイト"のバレエも、ファンを劇団四季の歴史への郷愁に誘う。
「異国の丘」の"アレキサンダーズ・ラグタイムバンド"のジッタ・バックダンスになると、どうしても雑念が入ってしまう。劇団四季昭和史ミュージカル原作では、太平洋戦争勃発直前に米国留学中の日本首相九重菊麿の息子、九重秀隆と中華民国蒋介石夫人、宋美齢の姪、宋愛玲が初めてパーティーで出会うのがこの場面。当時、中華民国の国際社会へのPRの上手さに比べ、日本政府は遅れをとっていたが、今、現在も尖閣諸島に関して菅内閣の外交のマズさには腹が立つ。
国連という世界各国代表への絶好のPRの時と場所を得ながら、尖閣諸島での中国船の衝突ヴィデオの公開もなく帰国してしまっている。日本の指導者たちは未だに歴史から学ぼうとはしていない。
さて、本筋に戻して、、、。圧巻は「クレージー・フォー・ユー」から"アイ・ガット・リズム"に乗っての加藤敬二のタップ・ダンスだろう。フット・ロッカーを相手に究極のタップ・パフォーマンスを見せているうちに、若手ダンサーたちが加わる。マーチング・バンドまで登場し、これを率いるバトントワラーの妙技も見ものだ。
「55 Steps FINAL」はミュージカルを超えたスーパー・エンターテイメント。
FINAL等と言わず、「60 STEPS," "70 STEPS」として続けていって欲しいと願っている。
(電通四季劇場「海」 11月21日まで)
2010.10.4 掲載
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