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四季劇場 夏 こけら落とし公演
Disney's Musical 美女と野獣

美女と野獣

ディズニー・ミュージカル「美女と野獣」が、劇団四季「夏」劇場のこけら落とし公演として15年ぶりに東京に戻ってきた。

豪華絢爛な衣装とダイナミックな舞台装置にイリュージョン。呼び物の醜い野獣からハンサムな王子に変身するトリックは、オペラ・グラスでしっかり観察していてもわからない。

観客たちが、「あれだけ空中でぐるぐる回って平気なのか?」と心配し、「天井に舞い上がる直前に篭脱けしてメイクを変更し、舞い降りたところで戻っているのではないか」と真剣に議論している様子が毎度の事ながら微笑ましい。四季広宣部によるとディズニー側と変身トリックの秘密厳守の契約書まであるという。


お話と見どころ

昔々ある国で甘やかされて育った王子は、寒夜にバラの一枝を差し出して一夜の宿を乞う老婆を追い返してしまう。老婆は魔法使いで、王子を醜い野獣に変え、魔法のバラの花びらが散り落ちないうちに愛する女性を見出し、しかもその女性に愛されなければ永遠に人間に戻れないと宣言する。

王子の変身に従い、家臣たちも執事は時計、給仕長は燭台、ミセス・ポットはティー・ポットなどに変えられる。家臣たちの扮装がアニメぽくって可愛い。

美女と野獣

村の発明家モリースの娘、ベル(坂本里咲)は本屋の本をすべて読み終わったほどの読書家で、押しかけ求婚者のガストン(田島亨祐)には大迷惑している。発明家の父は森で迷い、狼に襲われて野獣の城に助けを求めて駆け込むが、プライバシーを侵されて怒った野獣(福井晶一)に牢に閉じ込められる。

父親を助けるために身代わりに城に入ったベルを見て、野獣も家臣たちも彼女が野獣に心を開けば人間に戻るチャンスが来る、と喜ぶが、野獣のマナーのなさにあきれたベルは夕食への招待を断ってしまう。



ビー・アワー・ゲスト

ところが空腹に耐えかねてキッチンに現れたベルを見たポットたちは、大晩餐会を開く。ナイフ、フォーク、鍋たちのダンスに花火まであがり、久しぶりにお客様を接待する歓びを爆発させる。薄暗い城内から一転して、"ビー・アワー・ゲスト"の華やかで迫力ある歌と踊りに、客席からは大拍手。

モリースはガストンと村人たちに助けを求めるが、彼らは野獣の存在など信じない。「エルビス・プレスリー」張りのマッチョなガストンを男の中の男と持ち上げる。ガストンと男たちのビア・マグを打ち鳴らしての酒場でのダンスが、西部劇の一シーンのようで面白い。

城を抜け出したベルは彼女を助けるため狼と戦って傷ついた野獣を介抱し、図書室に案内される。そこで見つけた「アーサー王物語」を字の読めない野獣に代わって読み聞かせているうちに、ベルは野獣の優しさに気付いてくる。家臣たちもこれで「人間に戻れる」と期待する。

精神科医と計らいモリースを監禁したガストンは、暴徒と化した村人たちと共に城を襲う。西の塔にひそかに安置されていたバラの花弁はもう数枚を残すのみ。時間切れが迫る中で愛するベルを父親の元に戻し、気力を失ってしまった野獣の背中をガストンの剣は一突きするが、力余って自らも城壁から落ちてしまう。

駆けつけたベルは野獣を抱きしめ愛を告げるが、魔法のバラの最後の一片がヒラリと落ちてしまう。しかし、その瞬間、野獣の姿はきらめく光線を浴び旋回しながら天高く舞い上がる、、、。

美女と野獣


居心地のよい四季劇場「夏」

「シアター通よりシアター好き」ではシアターをトータルに捉えている。

公演の内容がよくっても劇場の観客用の設備が「ショボイ」と悲しくなるが、羽田空港に近い大井町に首都圏で六番目に四季専用劇場としてオープンした劇場「夏」は、まさに「観客フレンドリー」。ワイン・カラーのカーペットが広々としたロビー、ハイテク・チケットなどスマートで、「シアター好き」には実にリラックスできる居心地のよい空間となっている。

空港の搭乗口と同じく、切符をかざして入場するのだが、読み取りと同時に入場扉、座席表までプリント・アウトが出てくる。背伸びしてロビーの座席掲示版で自分の席を探す必要はもうなくなった。

女性がお洒落して劇場に入った時、フル・レングスのドレスや訪問着の袖がトイレの壁に触れるのは気になるものだが、女性用トイレの個室の広さはニューヨークのメトロポリタン・オペラ劇場並みで、ブロードウエイのパレス劇場よりも広いのが用意されている。幕間が重なる時がある「春」「秋」劇場に比べると、格段に使いやすい。

客席数に比べてビュッフェが小さく、休憩時間は長蛇の列が続いていたが、これは近隣の飲食店が繁盛するようにとの劇団四季の配慮かもしれない。大井町という土地柄、現在は居酒屋や割烹店では美味しくて大量、「ガストン」サイズのマッチョ盛り付けだが、そのうちお洒落なカフェやレストランも共存してくるのだろう。プレ・シアター ディナーの選択も楽しめそうだ。

劇場「夏」は東京都心からも横浜からも近い。夏休みのプレゼントに女の子たちを連れていくのに最適の公演だ。(四季劇場「夏」ロングラン上演中)

2010.7.26 掲載

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