アニメや演劇がゲームになるのではなく、これからはゲームと演劇がコラボレーションして劇場に進出してくる時代のようだ。
新感覚のアクション時代劇「ガーネット・オペラ」(作・演出 西田大輔)が、小劇場からメジャーの有楽町劇場街に進撃してきた。
西田主宰の「劇団AND ENDLESS」の劇団外での公演は今回が初めてだが、忠実なファンらしい層がロビーに大挙していた。
武将たちの安土城集合から本能寺決戦まで、若い役者たちの超スピードの殺陣と観客をくすぐる駄洒落に、有楽町の観劇層も小劇団の楽しみ方を見直せただろうか?
作品の舞台は戦乱の1582年、天下布武に王手をかけた織田信長(中村誠治郎)は味方・敵方の武将に書状を回し、竜の刻印が記された宝箱を7日7夜のうちに探し出す天下取りゲーム「ガーネット・オペラ」に挑戦させる。
味方の武将、明智光秀(宮野真守)、羽柴秀吉(入野自由)、柴田勝家、徳川家康の他、敵方の上杉謙信、武田勝頼までが安土城に集結する。時の将軍足利義昭、宣教師ルイス・フロイスまでこの騒ぎに加わり、信長のゲームを盛り上げる。
「藤吉郎様がスキかトウモロコシが好きか」「静かなること林のごとく…動かざること山下清、」信長から「サル」と呼ばれていた小柄な入野の藤吉郎は駄洒落の連発と軽々と舞台を跳ねまわるすばしっこいの動きで観客を喜ばせるが、信長最後の本能寺の場面になると打って変って三人の主役の一人としての面目を示す。
スピードと駄洒落ばかりが連続するのではない。時代劇としてシリアスな場面に変わると中村誠治郎の信長は光秀と藤吉郎に「天からの雨。雨は千、万の槍となって降ってくる、槍に耐えられるのが天下人」だと教える。長身、筋肉質の毅然とした姿が新しいスターの誕生を感じさせる、といったら褒めすぎか?
宮野真守の明智は信長に焼き打ちを命じられた石山寺で満開のザクロの花を見上げ、「ザクロは悲しい花だ・・・」。父の死、母の死、敗戦にまつわる雨とザクロの花の辛い思い出を煕子(ひろこ)(実は石山本願寺門主顕如上人)(黒木マリナ)に語る姿が宝塚の男役のようにロマンチックだ。
人肉を食す鬼子母神にお釈迦さまが子どもの代わりにザクロの実を食べるように諭して以来、美しいザクロの花は「ガーネット・オペラ」の血なまぐさい結末を暗示しているが、宮野と黒木の悲しいツー・ショットがいかにも新鮮だ。
西田大輔と「劇団AND ENDLESS」は新しい観客層を有楽町劇場街に呼び込んだ。メジャー演劇界を刺激する異端として今後の公演に期待している。
一つ残念なのは節目節目で舞台に現れるダンサーの衣装と振付。他の役者たちのBASARAぶりに比べるとあまりにも普通すぎる。次の公演で一工夫すればコラボレーションの値打ちがもっとUpするだろう。(シアタークリエ 3月25日まで)
2010.3.20 掲載
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