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The 39 Steps 秘密の暗号を追え

このコラムのタイトルは「シアター通よりシアター好き」。「評論家の劇評」というよりは読者の皆さんに「演劇と演劇空間の好きな観客仲間の感想」を伝えるのがコンセプトだが、"The 39 Steps"観劇ではちょっと「通」になった気分も味わってほしい。

原作ジョン・バカン作「三十九階段」、原作映画アルフレッド・ヒッチコック監督「三十九夜」、日本語版演出ディヴィッド・ニューマンの"The 39 Steps"は思い当たるくすぐったい名場面やアクションの意外さで客席は笑いで包まれる。

  ヒチコック映画「北北西に進路をとれ」、「知りすぎていた男」のパロディーかと思わすスリラー・コメディーで総勢たった4人のいずれも芸達者な個性的な俳優が139の役を強烈なスピードで演じ、終幕でやっとロマンチックな幕切れとなる。

手錠でつながれたままリチャード(石丸幹二)と
パメラ(高岡早紀)はホテルにチェック・イン

  有閑階級の紳士としてロンドンで暇を持て余しているリチャード・ハネイ(石丸幹二)はある日、ミュージック・ホールに出かける。そこで、軽妙な司会者(浅野和之)とあらゆる数字と物事を記憶する天才、ミスター・メモリー(今村ねずみ)のショウを見ている最中に起こる発砲さわぎ。偶然に出会ったドイツ訛りの謎の美女、アナベラ(高岡早紀)は英国の軍事情報を敵国のスパイから守るための諜報員と打ち明け、一夜ハネイに宿を乞う。

ところが夜半に押し掛けてきた2人の男の手でアナベラは背中にナイフを突き立てられて死亡、「犯人はリチャード・ハネイ」との大々的な新聞記事に驚く彼は、冤罪を晴らすためアナベラの言い残したスコットランドの片田舎に住むという小指のない男を探して鉄道で北に向かう。

ご都合のよい蒸気機関車内での美女との出会い、2人で列車からの必死の逃亡などヒチコック映画のパロディーに、「石丸はいつケリー・グラントになったのか」と笑ってしまう。2人の偽刑事に逮捕されてからは木箱の列車が今度はボロ自動車になり、凹凸の多い田舎道でのタイヤの上下運動に合わせて4人そろって一斉にジャンプする姿に客席は爆笑で包まれる。

美女と手錠で繋がれたままホテルのベッドへ。さあハネイはどうするか?

ようやくロンドンに辿り着いてミュージック・ホールに駆けつけると、またしても銃声!
倒れたミスター・メモリーが口走る数字は果たして英国空軍機密情報なのか?

司会者 浅野和之(左)とミスター・メモリィー 今村ねずみ(右)

主役の石丸幹二はリチャード・ハネイを気持ちよさそうに演じ、高岡早紀はアナベラ、マーガレット、パメラなど美女役で魅力たっぷり。儲け役は2人の道化、今村ねずみと浅野和之で暗殺者、ホテルの亭主と妻、刑事、エトセトラと秒速で変身して客席を沸かす。

この4人組はシアタークリエ千秋楽の後は仙台から福岡まで全国ツアーするが、人数も小道具も、省エネ・省資源の旅役者の公演として、全国の観客を演劇通に"教育"するのだろうか。
(シアタークリエ 3月4日まで)

2010.3.9 掲載

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