観劇後の感想は「みずほちゃんに見せたい!」
チルチルとミチルが訪れた「未来の国」で生まれるのを待っている子どもたち。お母さんのおっぱいの匂いがするような「本当の」子どもたち10数人が舞台一杯に広げる幸せを消費者・少子化問題担当の福島瑞穂さんにしっかり感じてもらいたい。
両親の年収で子育て手当制限を云々するよりも、まず日本に必要なのはもっと沢山の子どもたちの笑顔だとシッカリ納得させられる。
「ドリーミング」はフィナーレがまた微笑ましい。
チルチルとミチルがカーテン・コールに応える舞台には「弟として」生まれてくるはずの幼児がシッカリ鳥かごを抱えて鎮座してニコニコしている。
スタンディング・オべーションに応えて現れる子役たちの表情は「自分の仕事を成し遂げた」誇りで輝いている。
ストーリー
「ドリーミング」(原作:モーリス・メーテルリング「青い鳥」より/製作・演出:浅利慶太)は40年前に国内最高の作詞・作曲家の協力を得て製作された、劇団四季家族ミュージカルの古典だ。今回ポップな衣装と舞台装置によりスペクタクル・ファンタジーとして上演されている。
貧しい樵小屋のクリスマス・イヴ。魔法使いのお婆さんがやってきて娘の病気を治すため、チルチル(大徳朋子)とミチル(岸本美香)に青い鳥を探してほしいと頼む。渡されたのは「飾りのダイヤモンドを回すと今まで見えなかった本当の姿が見える帽子」。チルチルはこれを被ってミチルとともに青い鳥を探す旅に出かける。さて、光と影の冒険の旅の始まり。
小さな観客たちは犬のチロウー(田中彰孝)の愚直さにヤキモキし、狡賢い猫のチレット(林香純)の本性をいつ兄妹が見抜くのかとハラハラし、砂糖、火、水、パン、牛乳などお供の精たちの変化ぶりをドキドキしながら見物することになる。
「思い出の国」の場面でチルチルとミチルが亡くなったおじいさん、おばあさん、妹、弟たちと再会する姿には三世代家族間の愛情が溢れていて、大人の観客には懐かしい風景だ。
帽子のダイヤモンドを回す度に現れる真実の姿。途中で色が変化する青い鳥にがっかりしながらクリスマスの朝に目覚めたのは元の樵小屋。
隣のお婆さんが病気の娘が二人の飼っているキジバトを欲しがっているという。見ればキジバトは青色になっている。手渡そうとして鳥かごを開けると青い鳥は大空へと飛んで行ってしまう。
この場面で筆者は小さなリクエストをしたい。これだけの幻想的な舞台装置と新しい奇抜なファッションで舞台を盛り上げているのだから、もうひと頑張りして、青い鳥を舞台袖に直行させないで、客席上空をゆっくりフライングさせてから退場させられないものか?
青い鳥に自分たちの頭上を舞ってもらったら、観客はもっと喜ぶに違いない。
子役出演時間の制限
さて、現在、労働基準法で演劇子役の就労時間は午後9時までとなっており、ソワレでは子どもの役は小柄な女性で代行しているが、不自然だし芸術的にも妥協が迫られる。
また、志望校を目指して学習塾で午後10時、10時半まで学ぶ子どもたちがいる一方で、俳優を志願する子どもたちにソワレでカーテン・コールを受けるアーティストとしての喜びを否定するのも酷な話だ。
今回の「ドリーミング」の子役たちは交代出演のため総勢41名をリスト。当初は四季劇団で研修中だった子どもたちだが、その成長があまりにも素晴らしいので急遽舞台にあげることになったのだという。
更に現行の労働基準法内でソワレのカーテン・コールに出演させるため、上演時間2時間45分を2時間30分とカットし、休憩時間も15分短縮するという対応がなされた。
しかし、本物の児童俳優の舞台はこの大英断の値打ちがあった。(四季劇場 秋 11月23日まで)
2009.11.25 掲載
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