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ミュージカル

"To Wonderful Wonderful Copenhagen
Salty old queen of the sea
Once I sailed away
But I'm home today
Singing Copenhagen, wonderful,
Wonderful Copenhagen to me!"



子ども時代に読んだ童話と学生時代になんども見た"Hans Christian Andersen"(「アンデルセン物語」1952年サミュエル・ゴールドウィン制作)の影響で、コペンハーゲンを訪れるたびに市庁舎の脇にある等身大のハンスの銅像の膝元に腰掛けてコペンハーゲン賛歌をハミングするのが心地よい習慣となっている。世界各地から同好の士が集まるらしく、台座は心なしか少し磨り減ってピカピカになっている。

この映画が劇団四季によってミュージカルとして上演されると知って、「期待しすぎないで」と前もって自分に言い聞かせた。というのも原作が素晴らしいほど別バージョンでの落胆が大きくなるからだ。

とはいえ春休みのプレゼントとして、入学を控えた男の子と小学4年生の女の子二人を連れて四季劇場「秋」に向かった。

映画ではハンスにダニー・ケイ、バレエ団プリマ・ドンナはバレエ・ド・パリのスター・ダンサーのジジ・ジャンメール。劇中の振付は同バレエ団の主宰者兼振付師ローラン・プティーと、当時の世界バレエ界トップだった。バレエ好きのサム・ゴールドウィンは通常予算の4倍も掛けて芸術的にも興行的にもハリウッドの最高水準の作品に仕上げたという。

ところが、幸運にもこの心配は杞憂だった。やはりライブで観劇する"シアター"は映像より感動する。

主演の佐野正幸は素朴で夢見がちなハンス・クリスチャン・アンデルセン役にピッタリで、「私はハンス」と朗々と歌い上げる姿はダニー・ケイより親しみやすく且つカッコいい。斉藤美絵子のプリマ・ドンナ、マダム・ドーロはバレリーナならではの役どころ。「このトウ・シューズでは踊れない」とポワントから崩れ落ちる場面では、「骨折したのか?」と一瞬子どもたちの呼吸をのませた。歌の方ももっと上手くなってほしい。

映画とミュージカルが異なるところはバレエ「人魚姫」の幕。映画では、初演幕開け前で神経質になったバレエ団の監督であり主演ダンサーであるマダム・ドーロの夫ニールスが、妻に執拗に面会を求めるハンスを舞台裏の小部屋に鍵を掛けて閉じ込め、折角の初舞台を見せない。が、ミュージカルではニールスは原作者に敬意を表して、ハンスを舞台上手にナレーターとして座らせる。

「シアター」は人々が一時を楽しみ、元気をもらって帰宅するところ。日本語版の脚本の方がずっと観客に親切だ。

劇団四季ミュージカル アンデルセンより

恋する王子のため声を捨て人間になった人魚姫の物語を、ハンスが静かに語り始める。大荒れの難破船から救い出した王子に恋する人魚姫は魔女を訪れる。海中の奇妙な姿の魚たちが観客席の子どもたちのひそかな歓声を集める。しかし、外国の王女を愛する王子。王子の愛を得られないまま空気の精となって天上にのぼる人魚姫。このバブルが海中から天上に湧き上がるシーンは幻想的で素晴らしい。(照明 紫藤正樹)

おなじみの人魚姫の物語だが、この舞台だけでも劇団四季バレエ団(!?)の独立した一作品として観劇する値打ちがある。

劇団四季版「アンデルセン」の特徴は、男性バレエ・ダンサーが豊富なこと。松島勇気のニールスをはじめとして、これほど筋骨逞しい若手バレエ軍団は都内のバレエ団にもいないのではないだろうか。

更に特記したいのは、座席係の女性の顧客への対応だ。貸出したシートクッションの正しい使い方を同伴の保護者ではなく子どもに直接説明する。一人前あつかいされた「小さな紳士」が立派に助言を守る姿がほほえましかった。

また、「ニコにこ観劇マナーBook」を読んで、幕間に半分のみ残したジュースを自分たちでロビー・フロントに預けに行くなど、「シアター」は子どもの環境・社会訓練の場ともなっているようだ。

四季劇場「秋」は作品の内容ばかりではなく、劇場スタッフの心配りで大人もこどもも楽しめる劇場空間となっている。ミュージカル「アンデルセン」は千秋楽まであと1か月、是非こどもたちと一緒に観劇してほしいものだ。(四季劇場 秋 5月30日まで)

2009.4.28 掲載

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