基本的には日本の公開時期にあわせて書かせていただいているこのコーナー、アー面白かった!いつ公開されるかな?とワクワク待っているのに、公開されない!書けない!という映画の数々…
という憂さをはらすため、これから、時々は日本公開未定の映画もご紹介していきたい。
少し待てば日本の配給会社もつくかな?という作品は後に回して、見込み薄と思えるものからご紹介する予定。
もし、観てみたいと思っていただけたら、ロンドン発 俳優・映画情報の感想に、○○公開希望とでも入れてくだされば、たくさんたまった時点で考える配給会社が現れるかも?
公開されない映画だって…その2
『Trash Humpers(トラッシュ・ハンパーズ)』
19歳という若さでラリー・クラーク監督『KIDS/キッズ』で華々しい脚本家デビューを飾った後、監督業に転進、個性的な作品を発表し続けるハーモニー・コリン監督の新作。
コリン作品中では比較的オーソドックスな『ミスター・ロンリー』(第19回中、少しふれています。)の反動から作ったというだけに、荒い画質で、たいしたスジもないアンチ映画的な作品になっている。
それが、フィクションであるにもかかわらず、コペンハーゲン国際ドキュメンタリー映画祭でグランプリを獲得。フィクションであると同時にフィールド・トリップでもあると同映画祭が解説しているように、あからさまにお面とわかるシワシワの顔をつけた役者が徘徊する様子をカメラが追っていく。
コリン監督はかつてドグマ95というアバンギャルド・ムーブメントに参加し、『ジュリアン』を製作、高評価を得ている。
ハンドカメラ使用やスタジオセットを使わないといったあたり、その影響かとも思うが、監督自身は否定。どの流れとも無関係に、今回は作ったそう。
商業映画とは少し距離を置いているようなコリン監督だが、一度見たら忘れられない独特の表現を絶賛する人もいる。
その中の1人、ドイツの巨匠ヴェルナー・ヘルツォーク監督は、『ジュリアン』と『ミスター・ロンリー』に俳優として参加している。
逆に『ミルク』のガス・ヴァン・サント監督のいくつかの映画には、コリン監督が俳優として出演、チョイ役だが、作品同様に個性的なキャラがにじみでていて楽しめる。
デザイナーのアニエス・べーもコリン作品ファンで、よくコラボしていたり、ジョニー・デップもコリン監督のビデオ作品に出演していたりと、幅広い。
コリン監督インタビュー待ちしている間、アメリカの若い監督と本作について話せた。
「観てる時にはよくわからないけど、後になってから、すごい映画なのかなって思うよね。よく場面が思い浮かぶし」「インパクト、強烈ですよね。悪夢みたいな」「そう!まさにそれ!悪夢…」
見た人は好きか嫌いかに別れ、中間がないとも言われるコリン作品の中でも、かなり風変わりな本作、狙いすましたような感動作には飽きた、とか、ともかく変わったものが観たい、という方にはピッタリ。でも、そんな方がたくさんいるとも思えないから、日本での劇場公開は難しいかな。
DVD発売に期待をかけたい。
3人の老人が、えげつなく暴れまくる様子が画質の荒い映像で続く。老人達のダンス、歌、高笑い…。ハロウィーン時に見かけるような、ガボッと頭からかぶる仮面をつけて老人役をしているメインキャラクターの男性2人と女性1人が、監督自身と奥様に、お友達の男性というのがご愛嬌。
「子供の頃、ゴミ箱をたたきまくって大騒ぎしている老人達が窓から見えた。よくわからない、よその星の言葉を使って交流しているように思えた」というコリン少年が受けたインパクトが、そのまま表れたような映像になっている。
監督 ハーモニー・コリン
出演 ハーモニー・コリン、 レイチェル・コリン ほか
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2010.5.14 掲載
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