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自分のままで大丈夫
ゲイじゃなくてもはげまされる
『ミルク』4月18日公開

『ミルク』は、ゲイであることを公言して当選したアメリカ初の公職者ハーヴィー・ミルクを描いた映画。
  「ミルクを知った時、ぼくは13歳だった。ミルクはぼくに希望をくれた。ぼくだって自分の人生を生きられる。ぼくが誰であるかを公にできる。いつか結婚できる日だってくるかもしれない。ゲイやレズビアンのみんな、君達は美しい、すばらしい。誰もそう言ってくれなくたって、神様も愛してくださっている。皆と同じ権利が与えられる日が、このすばらしい国で、もうすぐくるはずだ。神様、ハーヴィー・ミルクを与えてくださってありがとう」とは本作でアカデミー脚本賞を受賞した際のダスティン・ランス・ブラック(写真はベルリン映画祭でのもの)のスピーチ。ブラックもゲイであることを公言している。キリスト教では同性愛を禁じており、その葛藤に悩む同性愛者も少なくない。
  ミルクにはげまされた13歳の少年が34歳となり、ミルクを書いて受賞したとなれば、どれだけうれしかったことか。
  そのブラックのスピーチを聞く、感に堪えないという表情が映し出されたショーン・ペンも、アカデミー主演男優賞を受賞、今度はブラックが涙をぬぐいながらペンのスピーチを聞く姿が映し出された。人権活動にも力を入れているペンは、カリフォルニア州でハーヴィー・ミルクの記念日を制定する運動にも助力している。

もう1人、会場で喜びの表情が映し出されていたのが、クリーヴ・ジョーンズ。ブラックとペンの両方がスピーチで謝意を示した人物だ。映画中ではエミール・ハーシュが演じたミルクのオフィスで働く学生インターンで、映画制作にはアドバイザーとして加わった。
  現在は活動家として活躍するジョーンズはロンドン・レズビアン&ゲイ映画祭でトークショーを行った。
  「今の世代には、ぼくらが子供の頃はSFだったようなコミュニケーションテクノロジーがある。でも、孤立し、落ち込んで、無力感にさいなまれている。まず、コンピューターのスイッチを切り、他の人間と目と目を合わせて話すんだ。肩を組んでのマーチを経験してみるんだ。何かできることはあるはずだ」と、ミルクと出会ったことで活動家の道を歩みだし、ブラックとの出会いでアカデミー受賞映画を作り上げた人らしいメッセージを若い世代に向けた。

もうミルクを知らない人の方が多くなっていることに対し、何かしなくてはと考えての映画制作だったというジョーンズが「もちろん、すばらしいドキュメンタリーはあるけど、みんなドキュメンタリーはあまり見ないから…」と言っていたのが、ロバート・エプスタイン監督の『ザ・タイムス・オブ・ハーヴィー・ミルク』。こちらも1984年にアカデミー賞を受賞している。
  カラフルでチャーミングであたたかい人物としてペンが演じて見せたミルクが、本当にその通り。暗殺の第一報、叫び声をあげる報道陣というシーンから始まるこのドキュメンタリー、本物の迫力で『ミルク』以上に感動する人もいるかも。日本では『ハーヴェイ・ミルク』という邦題で、DVDになっているほか、『ミルク』公開時期に合わせ、上映する館もあるようなので、こちらも是非。

『ミルク』4月18日公開 ■ ■ ■

「自分が暗殺された時のみ公開すべし」というテープを録音する、マイノリティのために活動したサンフランシスコ市政執行委員(市議とほぼ同義)ハーヴィー・ミルクのシーンで始まる。そのテープが公開される日がきてしまうが、暗殺者となったダン・ホワイトも悪者としては描かれていない。暗殺のニュースを受け、キャンドルを持った人々がサンフランシスコの町を埋め尽くすシーンに参加した数千のボランティアの中には、実際に当時、キャンドルマーチに加わった人も多かったという。

 監督 ガス・ヴァン・サント
 出演 ショーン・ペン、エミール・ハーシュ、ジョシュ・ブローリン、ジェームズ・フランコ 他

2009.4.13 掲載

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