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金、銀、クリスタルもあるクマさん『ユキとニナ』

2月はベルリン国際映画祭が開催される。私には日本映画にキャッチアップできるのもうれしい映画祭なのだが、今年、見たいと思っているのが本作。
  日本とフランスとに別れようとする父母を、なんとかしようとする9歳のユキ…あらすじを読んだだけで、もう泣きそうだ。
  離婚率が高いイギリス、ここロンドンでは人の出入りも国際規模で、地球のあっちとこっちに別れる父母も多い。身近にも、この1月、イギリスに父親を残し、母親とアメリカに行く子がいる。
  せめて子どもが大きくなるまで、いっしょに居られないものか、という意見ももっともだが、いがみ合う父母、いや、うまくいっているフリをする父母のもとで大きくなる子どもでさえ、それはそれでダメージを受ける。どうすべきなんて軽々しくは言えない。

本作が上映されるのはジェネレーション部門。子どもから若年向けの作品部門だが、大人でも充分楽しめる作品もある。性描写や残虐なシーンがなく、子どもにも安心して見せられる作品の部門ということらしい。
  本作も、『不完全なふたり』で別れようとするカップルを撮った諏訪監督が、同様の状況を子どもの視点から描いたもの。お子様だけが対象という感じでもなさそうだ。
  評にも、詩的だ、真摯だ、など期待させる言葉が並んでいる。

ジェネレーション部門では、各最優秀作にクリスタル・ベアが与えられる。
  昨年、ティーンエージャー向け長編の部でクリスタル・ベアを受賞した『マイ・スーサイド』(原題)なども、なかなかの佳品だった。
  ゴールデン・ベア、シルバー・ベア獲得を目指すコンペティション部門が注目される映画祭だが、そのほかの部門にも、いい作品が山ほどあるのだ。
  大作、話題作揃いのパノラマ部門は外せないし、『愛のむきだし』(前回ご紹介)『精神』(第7回ご紹介)のように、チャレンジがある作品の集まるフォーラム部門も押さえたい。
  結果、ベルリン市街を駆けずり回ることになるのだが、到底全部は見きれない。
  分身の術でも使えればなあ…

『ユキとニナ』1月23日公開 ■ ■ ■

フランス人の父と別れ、日本に戻ろうとしている母。フランス育ちの9歳の女の子ユキは、親友の二ナとも離れたくない。両親を仲直りさせようとがんばるユキだが、うまくいかない。やはり離婚した母親と暮らすニナの、父親が住む田舎の家に行ったユキは、二ナといっしょに森に入り…

 監督 諏訪敦彦/イボリット・ジラルド
 出演 ノエ・サンピ、アリエル・ムーテル、イボリット・ジラルド ほか

2010.1.19 掲載

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