昨年のカンヌ国際映画祭でW受賞した映画が、今回の『ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲』。
賞の1つは、出演のワンちゃん全てに贈られたパルムドッグ賞。カンヌの最高賞パルムドールをもじったこの賞は2001年から毎年、名演した犬に贈られている。いかにも可愛らしい響きの賞だが、なめてかかってはいけない。
もう1つの賞が、ある視点部門賞。「独自で特異な」作品を集め、「ある視点」部門が作られたのが1978年。1998年から、その部門中の最優秀作品に贈られている賞だ。
すなわち、ワンちゃんが名演している独自で特異な映画である『ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲』、一筋縄ではいかないのだ。
13歳の少女リリと引き離された犬のハーゲン、少女と犬のそれぞれの物語が平行して進む。犬の運命をにぎる、まさにホワイト・ゴッドのような人間の姿を浮き彫りにした後、まさかの展開。
物凄い数の犬が通りにかけこんでくる恐怖シーンや犬対人シーンから、ヒッチコックの『鳥』、また『猿の惑星』を思い起こすが、そっち方向には行かない。最後まで、どうなるのか予測させずに見せきってしまう。コーネル・ムンドルッツォ監督が、エコノミッククライシスのみならずモラルクライシスも起こっているヨーロッパを単純化して表現したという映画だ。
一筋縄ではいかないと言えば、第65回でご紹介した異才タル・ベーラ監督もハンガリーのお方。今年のカンヌでグランプリ受賞のハンガリー映画『Son of Saul』もユダヤ人収容所をこれまでにない視点で描いた異色作。ハンガリー映画には、ちょっと身構えたい。
『ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲』11月21日公開 |
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両親が離婚した13歳の少女リリの心の拠り所は犬のハーゲン。母のもとから、父のところへと移された際も、いっしょだった。だが、面倒と費用のかかる犬を嫌った父は、ハーゲンを高架下に置き去りにしてしまう。お互いを探すリリとハーゲンは…。
監督 コーネル・ムンドルッツォ
出演 ジョーフィア・プソッタ、ショーンドル・ジョテール ほか
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2015.11.23 掲載
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