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現代の古き良き戦争映画『フューリー』

フューリーは戦車につけられた名前。乗組員5人がメイン・キャラクターとなります。
  戦車の映画といえば『レバノン』(第41回でご紹介)を思い出しますが、全然タイプの違う映画でした。『レバノン』は戦車の中から見える限られた世界を描くことで戦争のリアルを感じさせましたが、『フューリー』は戦場を舞台にヒロイックに活躍する男たちを見せます。

もともとデヴィッド・エアー監督はマッチョな映画が得意です。男の戦い、男の友情を、銃や車を小道具に描いてきました。これまでは警察ものなどで、タフな状況をくぐり抜けた男同士ならではの固い絆を描き、ぐっとさせてくれました。

そして、今回、戦争ものに挑んだのが『フューリー』です。第二次世界大戦が終わりに近づく頃、フューリーで敵地ドイツを行く5人のアメリカ兵はあだ名も個性的。隊長でタフガイの「ウォーダディー」、聖書からの言葉を引用して語るところから「バイブル」といった面々が、何を見せてくれるか期待させます。

戦車に踏みつけられ泥の中に押し込まれる死体や、徒歩で避難するドイツ人の長い列など、戦争の悲惨シーンが続きます。捕虜を無慈悲に撃ち殺すシーンなど、戦場のモラルの問題を提起しても見せます。
  そして、5人のキャラクターを際立たせるシーンとしてドイツ女性とのエピソードが挟まれ、5人で300人からのドイツ軍を相手にする戦闘シーンで終結。

エアー監督、戦争映画ということで、気張りすぎたかも。反戦を訴え、戦争の狂気も見せ、アクション・シーンで盛り上げ、人間性も出したい。ちょっと無理があります。
  それでも、戦闘シーンの迫力はさすがのエアー監督、また、キャストも熱演です。不可能なミッションに果敢に挑む勇者たちを称える、昔ながらの戦争アクション映画としてなら、満足して映画館を後にできるはず。


『フューリー』11月28日公開 ■ ■ ■

1945年4月、フューリーと名づけた戦車に乗る隊長ウォーダディー(ピット)の前に、新しい部下としてやってきたのは、まだ少年のような新兵(ラーマン)だった。タイピストとしての訓練しか受けていないという新兵を乗せ、フューリーはドイツを進軍し…

 監督 デヴィッド・エアー
 出演 ブラッド・ピット、シャイア・ラブーフ、ローガン・ラーマン ほか

2014.11.27 掲載

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