『メリー・ポピンズ』と言えば、ジュリー・アンドリュースのアカデミー賞主演女優賞はじめ、数々の賞をさらった大成功のディズニー・ミュージカル映画。『ウォルト・ディズニーの約束』は、その原作者パメラ・L・トラヴァース(エマ・トンプソン)とウォルト・ディズニー(トム・ハンクス)の映画化をめぐる攻防を描くもの。もちろんディズニー映画です。
ここは違う、そこも違うと、原作そのままにさせる気かという勢いのパメラと、楽しい歌とアニメ映像も混ぜてディズニーの世界を作り上げようとするディズニー・チーム。口うるさくお堅いイギリス婦人のパメラと、ディズニー・フレンドリーを体現するようなカジュアルで親しげなチームは全くそりが合いません。そのあたりは、コメディタッチで楽しく見せます。
それと平行して描かれるのがパメラの子ども時代。パメラの想像力を育んだ優しい父親(コリン・ファレル)が、社会的には…と、こちらはハート・ブレーキング。
かたくななパメラの中に、悲しい少女を見つけ出すウォルトもまた悲しい少年だったというところで、初めて接点が見つかる2人。
原題は『Saving Mr.Banks』。ミスター・バンクスとは『メリー・ポピンズ』に登場するお父さんで、パメラの父親がモデル。何の映画かわかりやすい邦題に、テーマに迫った原題というかんじです。
こんなに良いお父さんなのに…というファレルの父親役に泣きましたが、ハンクスとトンプソンにも拍手です。
パメラに感情移入しつつ、そりゃ映画化したいよねと、ディズニー側の肩も持ってしまうのは、ハンクスのウォルトだからこそ。良い人に見えるということでは、今のハリウッドでたぶん一番でしょう。
対するトンプソンも、『17歳の肖像』(第24回でご紹介)の校長先生役など、一見、怖そうで、その実、ちゃんと血の通った女性というのがはまる女優さんです。そういえば、『ナニー・マクフィー』シリーズではポピンズが原型と思えるナニー役もやってます。
それにしても、イギリスではナニー、日本ではドラえもんと、マジカルなパワーで子どもの夢がかなえられるお話は人気ですね。
本物のパメラは、映画化に最後まで納得していなかったとも言われています。うーん、でも、やっぱり『メリー・ポピンズ』は素晴らしい映画だし、『ウォルト・ディズニーの約束』も良い映画と思います。
エンディングには、映画関係者に意見する、当時のパメラ本人の声が流れます。それさえ、微笑ましいものに聞こえてしまうとは、ディズニー恐るべし。
『ウォルト・ディズニーの約束』 3月21日公開 |
■ ■ ■ |
1961年、パメラ・L・トラヴァース(トンプソン)はロンドンからロサンゼルスに向け旅立った。自著『メリー・ポピンズ』の映画化を求めるウォルト・ディズニー(ハンクス)と話し合うためだ。『メリー・ポピンズ』が生まれる基ともなった父親(ファレル)を思い起こすパメラは…
監督 ジョン・リー・ハンコック
出演 エマ・トンプソン、トム・ハンクス、コリン・ファレル ほか
|
2014.3.20 掲載
|