今、注目を集めるイギリスの新進女優と言えば、この人、キャリー・マリガン。
本作の主演でベルリン映画祭でシューティング・スターズを受賞。イギリスからは過去にダニエル・クレイグやレイチェル・ワイズも受賞している同賞は、10人の若いヨーロッパ俳優に送られるもの。マリガンが受賞した2009年には、『愛を読む人』(第8回でご紹介)でドイツの新人俳優デヴィッド・クロスなども受賞している。
本作のマリガンは、すごく可愛い。ダークなストレートロングヘアを下ろしての制服姿、くるくる巻いてお団子にしてワンピースなど60年代ファッションがオードリー・ヘップバーンを思わせる。
ロンドン映画祭で会見に現われた際は、明るめのショートヘア。だいぶ印象が違ったが、それはそれでボーイッシュで可愛い。小顔にパッチリ目のアイドル顔だから、何でも可愛いく見える。16〜17歳を演じているが実際には今24歳。若く見えるのも、うらやましい。
そのマリガンに負けないくらい、お隣のドミニク・クーパーも顔が小さかった。マリガンより一足早くイギリスの若手注目俳優となっていたクーパーは、『ヒストリーボーイズ』での魅力的な学生役など印象に残るが、ハンサムと言うより個性的な顔と思う。画面でカッコよさげなのは、小顔で全体にスッキリしたバランスになるのも大きいと見た。得だよな、小顔は。
本作でいいのは、もちろん小顔だけではない。女の子の成長物語、しかも、かなり痛い目にあっての成長なのが共感を呼ぶ。マリガンが演じるのは、オックスフォードを目指す女の子ジェニーだが、可愛くて賢い女の子にスクスク成長されたって、面白くも何ともないわけで、痛い目にあう、それも男で、というのがポイント。そこを超えて、たくましく生きていってくれるのがうれしい。
ロンドン映画祭では、父親役のアルフレッド・モリナ(スパイダーマンのドクター・オクトパスで一躍有名に)も絶賛されていたほか、校長役のエマ・トンプソン(イギリスではナニー・マクフィー2が公開中)と教師役のオリヴィア・ウィリアムズ(最近ではロマン・ポランスキー監督新作にも登場)もいい。最初は、話のわからない堅物みたいな校長や、オールドミス風の教師が、あら不思議、後半には、しっかり自分の考えを持った女性、素敵なおひとりさま生活を築いている女性に見える。メークや衣装で大変身というわけではなく、成長した主人公の目を通すと、こうも違って見えるというのが、上手く表現されている。
自立する女性を応援するような本作を「男なんかにかまってないで、ちゃんと教育を受けなさいってことよ」とまとめたのは、原作者リン・バーバーの友人でアーティストのトレイシー・エミン。ベッドをともにした人の名前をテントに貼り付けた作品「私が寝た全ての人」に、102人(母親など性的な関係とは限らない人物も含まれるが)の名前が並んだ豪傑の言葉だけに、説得力がある。
60年代のロンドンを舞台に、成績優秀でちょっと不良な女の子ジェニー(マリガン)の"卒業"が描かれる。両親の希望もあってオックスフォードを目指すジェニーだが、そんな日々をつまらないとも感じているところに現われた大人の男性(サースガード)。新しい広い世界に連れて行ってくれる恋人とも思えたのだが…
原題は、原作となったリン・バーバーの自伝「アン・エデュケーション」をそのまま使っている。バーバーは、雑誌、新聞などのインタビュー記事で知られるイギリスのジャーナリストで、今もテレビなどで活躍している。
監督 ロネ・シェルフィグ
出演 キャリー・マリガン、ピーター・サースガード、ドミニク・クーパー ほか
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2010.4.16 掲載
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