ご存知イギリスの大劇作家ウィリアム・シェイクスピア。世界中でいつも何かしら上演されているのではというほど見聞きする。
ロンドンでも蜷川幸雄のシェイクスピア劇が上演されるのは恒例行事。『アメリカン・ビューティー』のオスカー受賞コンビ、サム・メンデス監督とケヴィン・スペイシー(第34回でご紹介)による舞台『リチャード3世』も大評判になった。
映画化作品も数えきれない。『ロミオとジュリエット』など、レナード・ホワイティングとオリヴィア・ハッセー版やレオナルド・ディカプリオとクレア・デインズ版ほか様々で、どれを思い浮かべるかで、その人の年齢の見当がつくほど。
若き日のヒース・レジャーとジョセフ・ゴードン=レヴィットが共演した『恋のからさわぎ』(『じゃじゃ馬ならし』の現代版)のような、今となっては掘り出し物な映画も。
色あせることなく、現代まで生き続けるシェイクスピア劇だが、当のシェイクスピアがどんな人物だったのかは、なんと謎なのだ。あの良く知られたお髭の肖像画も、実際に本人かどうかの決め手がないらしい。
というわけで、シェイクスピアは○○という中に、何をあてはめても大丈夫。そこに第17代オックスフォード伯爵をはめた説を基に作られたのが、この『もうひとりのシェイクスピア』。
貴族ということで、エリザベス1世と絡ませたのがミソ。若き日に、年上のエリザベスと熱い日々を過ごしたり、歴史の変換点に立ち会ったりもしちゃうのだ。歴史家に言わせると有り得ない話らしいが、そのぶん絢爛豪華に楽しめる。
有り得ないと言えば、配役も。イケメンのジェイミー・キャンベル・バウアーが、どう年齢を重ねたら、いい具合にヨレッとしたリス・アイファンズ(第38回でご紹介)になるか、考えてしまった。
貴族の暮らしに飽き足らず、諸国を放浪し行方知れずに。すっかり別人のようになって、ひょっこり戻ってきた…とか、どうでしょ?
エリザベスの今昔を演じるヴァネッサ・レッドグレーヴとジョエリー・リチャードソンに、そんな心配はご無用。なにせ、こちらは本物の親子で、自然に似てる。
ジョエリーがジェイミーとのラブシーンを演じ、時を経てヴァネッサとリスになって再会。
実年齢では、ジョエリーとリスがともに40代で釣り合うお年頃。美人女優親子は、それぞれ自分の子どものような若いお相手との恋心を演じているわけ。
「恋する役は楽しかったわ」というヴァネッサは75歳。女優って、すごい。
『もうひとりのシェイクスピア』12月22日公開 |
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民衆を熱狂させる芝居の力に魅せられる第17代オックスフォード伯爵エドワード(アイファンズ)。エドワードには若き日に自作の芝居がきっかけでエリザベス1世に愛された日々もあった。正体を明かすことなく芝居を書き、民衆の心を動かし、王政の行方を変えようとするが…
監督 ローランド・エメリッヒ
出演 リス・アイファンズ、ヴァネッサ・レッドグレーヴ、ジョエリー・リチャードソン ほか
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2012.12.22 掲載
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