10月のロンドン映画祭で、思いのほか、売れていたのが本作。プレス向け試写がなかったため、一般向けチケットを狙うも、獲得できないほどの人気だった。
ジョナサン・レヴィン監督は本作が長編3作目ながら、ジョン・マルコヴィッチ、ニコラス・ホルトなどが出演する次作『Warm Bodies』の公開も控える新鋭。出演者も、主演のジョゼフ・ゴードン=レヴィットはじめ、アナ・ケンドリック、セス・ローガンなど、このところ話題作出演が続く面々。思いのほか、というのは甘く見すぎていたかもしれない。
というわけで、イギリスでの劇場公開でようやく鑑賞。
ガンを扱いながら、コメディ・ドラマとして仕上げた脚本がうまい。脚本を書いたウィル・ライザーは、自身の実体験でもあるガン闘病を基にしながら、半分はフィクションと言う。
ガン宣告を受けることになる主人公は、同棲中のガールフレンドに都合よく利用されてもいる。ジョゼフ・ゴードン=レヴィットが、いかにも人の良さそうな好青年の印象を醸しだし、はまっている。
そのガールフレンドのずるさに憤りつつ、主人公が患っていることまで、ガールハントの材料に使おうという調子のいい友人役セス・ローガンが、笑わせてくれる。
『マイレージ、マイライフ』(第21回でご紹介)で厳しい現実に打ちのめされる新入社員を演じていたアナ・ケンドリックが、今回は未熟ながら真摯なセラピスト役で好演している。
セラピストが自分の役割を超えて主人公に関わるようになるのは、レヴィン監督の前作『The Wackness』でも同様だった。そちらは、実は主人公の青年よりも破綻している自分自身の人生を、支えきれなくなるセラピストを演じた名優ベン・キングズレーが、印象的な作品だ。
レヴィン作品に限らず、セラピストが登場する映画は多い。セラピストを登場させると、主人公が内面を明かす場面が作れるうえ、一歩進めて、聞き役以上のキャラクターを与えることで面白い展開にもできる。一石二鳥というわけだ。
結局、イギリスでの劇場公開の終わり近くに見ることとなった本作は、日本でも今週末頃までの上映館が多いようだ。笑えて、ほのぼの見終えられるのが、クリスマス気分とも合いそうだ。
『50/50フィフティ・フィフティ』12月1日より公開中 |
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背中の痛みを覚え、医師を訪ねた主人公(ゴードン=レヴィット)に下された診断はガン。本人以上に動揺する家族や親友(ローガン)を気遣いつつ、ガンであることを明かす主人公だが、もちろん心の内には様々な思いがある。病院で紹介された若いセラピスト(ケンドリック)は、頼りなく見えたが…。
監督 ジョナサン・レヴィン
出演 ジョゼフ・ゴードン=レヴィット、セス・ローガン、アナ・ケンドリック ほか
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2011.12.23 掲載
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