ジェイク・ジレンホールも…の『プリンス・オブ・ペルシャ/時間の砂』。
何がって、演技派がやるアクションヒーロー。
ロバート・ダウニーJrの『アイアンマン』、エドワード・ノートンの『インクレディブル・ハルク』、ヒーローではないけど、ベニシオ・デル・トロの『ウルフマン』も入れてもいいかも。
こういう役って、新人俳優がステップボードにするようなものじゃなかった?
オーディションで選ばれ一躍有名になって、そこからキャリアを積んでいくみたいな。
最近のハリウッド大作、とんでもない大金かけちゃってるから、もう新人に賭ける余地もない?なんて勘ぐりたくもなるが、知名度も高い演技派+CGなら、はずす可能性も低い。
デル・トロは子どもの頃から狼男が好きだったそうで自分でプロデュースもしてるし、ダウニーJrもドラッグ中毒から立ち直ってのアイアンマンで大当たりだから、演技派のみなさんにも、それぞれ事情もあるだろうけど。
『プリンス〜』も、これまでのイメージを一新する長髪でムキムキのジレンホールも男前だし、文句はない。一時期、オーランド・ブルームやザック・エフロンの名前も出ていたが、ジレンホールで大正解だ。
このイメージで売れちゃって、これまでのような癖のある役が減ったりしないかと先回りの心配をしてしまったが、次は『ラブ・アンド・アザー・ドラッグス』(原題)でのバイアグラ・セールスマン役が控えているそうだから、ちょっと安心。
ところで、以前、ジェイク・ギレンホール、ベニチオ・デル・トロと書いたものを、今回は、発音通り、ジレンホール、ベニシオとしてみた。検索時ヒットしないのも困るので、こうして説明がてら両方あげたけど、浸透したらいいな。
Benicio、Gyllenhaalなんて、英語圏でも本人に聞かなくては発音がわからない名前のようだが。
さて、『プリンス〜』の1週間後に『マイ・ブラザー』公開となるジレンホールだが、撮影は逆。
荒くれ者の弟役のため、筋肉をつけ一回り大きくなった上に、『プリンス〜』でもっと増量してるから、言ってみればジレンホールの第2形態だったのが『マイ・ブラザー』。やっと、ここでタイトルにこぎつけた。
『プリンス〜』を第3形態と呼ぶか、完全体と呼ぶかは、今後による。もっとマッチョな役にチャレンジすることがあるかな?…レスラー?見たいような見たくないような…
ジレンホールが強烈に印象付けられたのは、何と言っても『ドニー・ダーコ』だ。
病んでいるのか特殊能力者かよくわからない少年を、ただ事ではなくドンヨリした雰囲気を漂わせて演じ、若手演技派として一躍注目を浴びた。
その後『グッド・ガール』の文学オタク、『ムーンライト・マイル』の秘密を抱えた青年と、そのままドンヨリ役が十八番になるかと思いきや、ヒース・レジャーとのラブシーンからアクションヒーローまでこなしてみせてくれたわけだ。
『マイ・ブラザー』では、ジレンホールのお株を奪う勢いでドンヨリしているのが兄役のトビー・マグワイアだ。帰還兵を演じるマグワイアの、何を考えているかわからない、膜がかかったような笑顔が怖い。
ジレンホールは、むしろジェームズ・ディーンのような、根はけっこういい奴なのに、わかってもらえない不肖の息子という泣かせる役どころ。
この兄嫁なら惹かれるのも当然のナタリー・ポートマン、渋いサム・シェパードの父親もいい。戦死した兵士の妻役のキャリー・マリガンも、複雑な心境をよく出している。
オリジナルは高い評価を得ているデンマーク映画『ある愛の風景』だが、リメイクしたかいもあったと思わせる俳優陣だ。
暴れ者の弟(ジレンホール)とは好対照の兄(マグワイア)は、美しい妻(ポートマン)と子どもに囲まれ幸せな家庭を築いている。父親(サム・シェパード)ともしじゅうぶつかり、鼻つまみ者となっている弟だが、兄の出兵後、残された妻子の面倒を何かとみてもいる。
アフガニスタンで捕らわれていた兄は、ゲッソリやつれた風貌だけでなく、人柄まで別人のようになって戻る。
誰にも心を開かず、弟と妻との間を疑うようになった兄は、ついに…。
監督 ジム・シェリダン
出演 トビー・マグワイア、ジェイク・ジレンホール、ナタリー・ポートマン ほか
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2010.6.1 掲載
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