ジョニー・デップのベストと絶賛の声もあがっているマッドハッターは、同じくティム・バートン監督の『シザーハンズ』でデップが演じた、手がハサミの主人公に勝るとも劣らないヘンテコで悲しいキャラクターになっている。バートン監督作品によく登場するタイプのキャラクターだが、デップがはまるキャラクターでもある。
デップのマッドハッターを見るだけでも充分な作品だが、脇のイギリス俳優もなかなか豪華。
バートン作品では常連のヘレナ・ボナム=カーター以外にもイギリスの名優、人気者たちが参加しているのだが、声の出演なので日本語吹き替え版では別人となってしまう。
ツイッターのフォロワーが百万人を超えた、発言が注目される知識人でもあるスティーヴン・フライのチェシャ猫、特徴のある声だけで顔が浮かぶアラン・リックマンの芋虫など、字幕版なら声の名演が楽しめる。
その中で日本語版でもわかりそうなのが、本人のイメージからCGが作られたマット・ルーカスのトウィードルダムとトウィードルディー。スキンヘッドの丸い顔と丸い体が、キャラクターそのままのコメディアンだ。BBCのコメディ番組「リトル・ブリテン」の大ヒットで一躍お茶の間の顔となったルーカスは、わかりやすいデブキャラのように見えるが、生い立ちなどを聞くと意外なことも多い。
トレードマークとなっているスキンヘッドは脱毛症によるもので、6歳で今の状態だった。両親が離婚し、母親に引き取られた後、父親が詐欺で投獄され面会に通ったというが、イギリスの有名校ハバダシャースに無事入学している。日本で言うと中学・高校にあたる私立校で、高い授業料と入学試験の難しさでも知られる。お勉強ができて裕福な家の子というわけだが、アリG、ボラット、ブルーノのキャラクターで知られるサシャ・バロン・コーエンも同じ学校の出身だから、人は見かけによらないものだ。
ゲイであることを公言しているルーカスは、TVプロデューサーの男性とシビルパートナー制度で結ばれた後、別れている。その元パートナーが昨年10月にフェイスブックで予告自殺した。しばらく仕事を休み、最近復帰したルーカスは、昨年3月のこの写真の時より、かなり体重を落としていた。ショックでやつれたのかと思ったら、元パートナーの件の前から、医師からオーバーウェイトにイエローカードが出て、ダイエットもしていたらしい。
本作では、演技派マイケル・シーン(第5回でご紹介)も白ウサギの声をやっている。そのマイケル・シーンが演じたこともある喜劇役者ケネス・ウィリアムズの代表作で、50年代から70年代にかけて作られた『キャリー・オン』シリーズにも出演しているバーバラ・ウィンザーも、本作のヤマネの声、という具合で厚みのあるイギリス勢になっている。
余談だが、ケネス・ウィリアムズは、自殺とも疑われる薬物の過剰摂取で亡くなったが、父親が毒物により死亡した際に疑惑を持たれたこともあり、シーンが演じたもののほかにも度々ドラマ化されているミステリアスな人物だ。
イギリスのお笑い界には、表に出ているイメージからはプライベートが想像できないような人も多く、ちょっと怖い。
『アリス・イン・ワンダーランド』4月17日公開 |
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ティム・バートン版「不思議の国のアリス」。アリス(ワシコウスカ)が、プロポーズされるまでに成長し、再度、不思議の国に迷い込む。
白の女王(ハサウェイ)の宮殿にいたところを赤の女王(ボナム=カーター)軍の襲撃を受け、ショックでマッドと呼ばれるようになってしまった帽子屋=ハッター(デップ)はじめ、バートン流のヒネリの効いたキャラクターが続々登場。赤の女王の幼児的な暴君ぶりは、ボナム=カーターが、私生活でもパートナーのバートン監督との間の2歳の娘を参考にしたのだそう。
後半、ジャンヌ・ダルク風になるアリスも新鮮。
監督 ティム・バートン
出演 ミア・ワシコウスカ、ジョニー・デップ、ヘレナ・ボナム=カーター、アン・ハサウェイ ほか
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2010.4.23 掲載
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